271.遠城帝4


「こ、これは、すごい、本当に貴国はすごい、ここまでくるとそれ以外の言葉では表せない……、これなら我が国は貴国に隷属してもよいぐらいだ」


「いやそうすると、国内から反感を買いかねないのでそこは自重を」


 コンダート王国にとって出雲国が隷属してくれるというなら、こちらとしても好都合なのだが、そのデメリットとして、ただでさえ不安定な出雲国国内情勢がさらに悪化し、最悪のケースとして遠城帝が政治の世界から引きずり降ろされるかもしれないこと等を考えると、結局その解決に貴重な戦力を割かなければならない事態に陥ってしまいかえって王国側にとっての不利益が生まれることになる。


「そ、そうであったな、ここはきかなかったことにしてはくれまいか」

「そうしよう。そんなことより遠城帝、こちら側としてはより現実的に同盟とを結びたいと思うのだが、いかがかな?」


「本当か!それも我々にとって願ってもない提案だ、ぜひとも貴国と同盟を結ばせていただきたい……。しかし、本当に我々と同盟を結んでメリットはあるのかが心配なのだが?」


「その心配には及ばない、こちらのメリットとして、出雲国軍との間で軍事情報の共有化を図ることにより今までよりも簡単に帝国西部方面や出雲国近海での帝国海軍の動きがつかめる。さらにこれから様々な軍事支援をしようと思うのだが、この支援によって貴軍が帝国と対等かそれ以上に渡り合えるようになってくれれば、我々からすればこちらの方面に差し向ける兵力を大きく割く必要性がなくなる可能性が上がるから好都合なんだ」


 実際出雲国がこちら側の陣営につくことを表立って宣言するだけでも、帝国がこれまで無理やりにでも従えようとしていた出雲が対帝国陣営についたという事実が伝わり、それが帝国軍部に少なくない衝撃と混乱を引き起こすだろう。


 情報共有については、はっきり言って情報を出雲側から得るよりこちらの情報部隊が動いた方が早いのでその点は期待していなく、むしろこれは彼らの技術支援として機能する。

 そして一番の王国側のメリットとして、出雲国領内に王国側の前線軍事拠点を置かせてもらうことだ。


 コンダート王国の前線基地を持つと出雲国とっては、それだけで抑止力にも繋がり、さらに帝国がいざ侵略してきたら真っ先にその基地から援軍を出すことが出来、同時に帝国軍に対して直接打撃を加えることが容易になる。


「なるほどそういうことか、して、その細かい内容はどの様に……」


「それも、紙に起こしてきてある、レナ、例のものを」


「はっ、これを」


 俺はレナに同盟について書いた書類を持ってきてもらった。


 そこに書かれている条文を簡単に表すと以下の通り。


 コンダート出雲同盟


 ・有償軍事援助協定

 旧日本軍と1945年以前のアメリカ軍及びドイツ軍の兵器を中心に召喚し出雲国の陸海空軍部隊に対して有償で渡す。

 兵器の選定は王国側で全て行うものとする。

 但し、コンダート王国の最新兵器については技術・情報なども含め一切渡さない。


 ・コンダート王国と出雲国との間の相互防衛条約

 両国が敵性国家によって領土・領空・領海を侵された時、互いが兵力を出しあい共闘する

 それにあたって情報を共有し、武器弾薬等の戦闘で必要な補給物資等の融通も円滑に行えるようにする。


 両国のどちらか若しくは同時に敵性国家による侵略を受けたときに対処できるように円滑に対応する為、

 統合指揮作戦能力や各部隊の戦術を高めるため、定期的に合同軍事演習をお互いの領内で行う。


 出雲国はコンダート王国各軍および準軍事組織の一部駐留を認めること。

 コンダート王国各軍および準軍事組織の基地及び駐屯地内は治外法権が適応される。


 コンダート王国領内の一部に出雲国各軍の駐留を一部認める。


 ・使用弾薬等共通化協定

 共同作戦時に弾薬等を融通しやすくする為に、共通規格に基づき弾薬等を使用すること。


 ・社会インフラ等有償支援協定

 鉄道敷設事業や他の公共事業等を有償にて支援し、これにより出雲国内の経済の活性化と成長を促す。


 ・コンダート出雲貿易協定

 互いの国の貿易物に対して関税を一切かけない。

 両国間での貿易取引にはコンダートメルを使うこと。



「これが同盟の内容なんだけど、いかがかな?」


「うむ、一先ずこれはこちらで一回家臣たちと話し合ってから決めたい、しばし時間をくれぬか?明後日には正式に回答する」


「それは、構わない」


「感謝する、では今日はこれにてお開きとしよう、そういえば両陛下方は我らの自慢の大和の城下町をご覧になりましたかな?」


「いやないな」


「でしたらぜひご覧ください、街並みもきれいですし景色がいい場所も何か所かあって良い息抜きになるかと……、その際に良ければうちの娘も連れて行ってくれると……」


「そうだなせっかくだから行ってこようと思う。ただ、千代姫と美鈴姫とは今回は回らない、今日はメリアとレナだけで行かせてもらうよ、二人とはまた別の機会に、それでは失礼する」


 一仕事終え、軽く一息ついた俺は、遠城帝が言う大和の城下町へと息抜きの為にメリアとレナを連れ見て回ることにした。



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