251.館浜湾沖海戦

 

 それから何事もなく時は経ち、水平線にはうっすらと陸地が見えていた。


 出雲国の使者からもらった地図が正しければ恐らく艦隊のいるこの海域は広く大きく湾曲した大和(だいわ)湾にいることになる、そして各艦艇の艦橋から見てとれる水平線上の黒い大きな影は間違いなく出雲国だろう。

 これを見た各艦の乗組員は皆総じて久々に上陸できると思って喜んでいた。

 それに加えて、未知の国である出雲国にいくというのだから、好奇心旺盛な性格の多い水兵にとってはさらにワクワクが止まらないだろう。


 しかし、艦隊が出雲の国の沿岸に近づいたとき、連合艦隊旗艦アメリカに一報が入った。


「報告!艦隊左翼側に位置する大和から打電!すでに戦闘状態にある艦隊を発見!恐らく帝国海軍と出雲国海軍が戦闘を行っている模様、出雲国海軍の旗色が悪いため加勢したいと来ております」

「司令長官、いかがいたしましょうか?」


 どうやらこれから入港する予定の沿岸海域では、帝国海軍と出雲国海軍の帆船同士の海戦が行われていた。

 しかし、同じ帆船といえど帝国海軍の場合、魔術で火力も射距離も強化された大砲によって有利に戦闘を進めているのに対して、出雲国海軍の大砲は帝国のものよりも小さく、安宅船のような比較的大型の船が二隻(コンダート王国海軍の種別でいうところの戦艦のような分類)、その周辺に関船のような中型の船(コンダート王国海軍の種別でいうところの巡洋艦のような分類)が取り巻いていた、さらに防衛側は20隻なのにも関わらず帝国海軍は40隻以上と倍の兵力で攻めてきているので非常に不利であった。


「陛下はなんていってる?」

「ヴィアラに任せると、そう仰せです」

「……、第五艦隊旗艦大和に打電“今すぐ帝国艦隊を叩け”」

「了解!」



 ヴィアラからこの攻撃命令を受けた、第五艦隊司令兼大和艦長のエレン代将は、すぐさま配下の艦に帝国艦隊への攻撃よりもまずは戦況や交戦戦力の配置を知るため、第五艦隊所属の強襲揚陸艦ワスプのMV-22オスプレイ等によって偵察を命じていた。


 この第五艦隊司令のエレン代将は、本来の司令官であるガンダルシア・エミリア少将が会議の為、空母アメリカに行ってしまっているので、その代理として第五艦隊の司令も務めることになっていた。

 そういった理由から、エレンは大佐から臨時で代将に昇進して指揮を執っている。



「偵察機より報告!帝国海軍側は現在数46隻、対する出雲国海軍側は7隻と来ています」

「どんな状態なの?」

「はっ、こちらを」


 報告してきた水兵から渡された何枚かの航空写真には、小さな船の集団を大きな船の集団が取り囲んでいた。

 報告の通りだとまず間違いなく中心で囲まれている船の集団は出雲国海軍のものだろう。

 そのほかの写真には、撃沈された船の生き残りが漂流している様子も写されていた。

 さらに他の写真には一部ズームアップされている写真がありそこには、帝国海軍の船が出雲国海軍の船に接舷して、帝国海軍の水兵が乗り込み乱戦状態になっていた。


「これは不味いな……、よし、一先ず周辺を取り囲んでいてなおかつ中心から離れている帝国艦艇は主砲とミサイルによって攻撃、残る出雲国海軍に接近している帝国艦艇は周辺の艦艇を沈めた後にワスプに搭載されているAH-64Fで近接航空支援を実施、急げ!」

「「「「了解!」」」」


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