252.館浜湾沖海戦2
一方その頃帝国海軍第七艦隊はというと、出雲国海軍を数や力の差を見せつけそれをいいことにもてあそぶようにしている。
これまで帝国海軍はコンダート王国海軍の最新兵器を搭載した艦隊にさんざん煮え湯を飲まされてきたが、出雲国海軍に対してやそれ以外の国の艦艇に対していまだに帝国海軍は圧倒的な力を発揮する。
その力というのは単に船に搭載されている魔術で強化された大砲ではなく、これまで様々な海戦で培ってきた経験もあるからだ。
その為、帝国海軍には優秀な司令官や水兵が数多くいる。
そして今、そのコンダート王国以外に対しては最強の帝国海軍は、迎撃のために勇敢にも向かってきた出雲国海軍をいとも簡単に追い詰め、出雲国海軍の船は3隻まで減らしていた。
もはやこれまでと悟った出雲国海軍側は降伏の印である白い旗を各船のマストに上げさせていた。
「提督、もう敵は白旗を上げ降参すると行ってきておりますがいかがしましょう?」
提督に報告してきたこの船の艦長だが、その艦長は薄ら笑いを浮かべていた。
この提督と呼ばれた長い白髪が特徴の初老の男は帝国海軍第七艦隊のアマリス提督といって、出雲国東部海域の攻略を命じられていた。
彼の見た目はいたって真面目な軍人のようだが、中身は見た目に反して残虐でそして欲にまみれた男だ。
そんな彼はいつも部下に弱い者や降伏した人を捕まえさせ大勢で取り囲ませ、金品を巻き上げ、そこからさらに男なら原形をとどめないまでに殴り殺させ、女ならば気を失うまで犯しそのまま拉致させるか、気に入ったものなら自分のものにしてしまうという蛮行を平気でやるような男だ。
しかし、海軍軍人としての実力は相当なもので、これまでもいくつもの海戦を指揮してきたが今まで一度も負けたことがないため、帝国国内では“無敵のアマリス艦隊”と呼ばれるほど英雄視されている。
「何をいまさら俺に確認しているんだ、早くしろ、俺はあいつを犯したくってたまらないんだ」
「ハイ提督、ではそのように」
「おい、あいつには絶対手を出すんじゃないぞ!それ以外は好きにしていい」
「部下にそう伝えておきます、では」
アマリス提督の言う“あいつ”というのは出雲国海軍の女将軍の館浜琴音(やかたはまことね)のことだ。
彼が狙っている、館浜琴音(やかたはまことね)は出雲国では珍しい特徴をしており、まず髪は赤くその赤毛をロールアップにし、特筆すべきは出雲の兵達が平均して150㎝あるかないかぐらいなのに対し、彼女の身長はゆうに170を超えていることだ。さらに提督の目が最も奪われているのは彼女の豊満な胸で、その大きな胸は陣羽織の上からでもはっきりと主張している。
しばらくすると、艦長は縄で縛られた状態の館浜琴音(やかたはまことね)を連れて来ていた。
彼女は最後まで抵抗したのか、まとめていた髪は乱れ、衣服は戦闘でなのかところどころ破れていた。
連れてこられている途中もさんざん暴れた様子で、縄で縛られているのにもかかわらず彼女を数人がかりで取り囲んできていた。
「くっ!離せ!」
「よくぞ、いらっしゃいました琴姫殿」
「その名を呼ぶな!無礼者!……、さっさと私を殺せ!」
アマリスは館浜琴音(やかたはまことね)の幼名である“琴姫”の名で呼んでいた。
その名を聞いた琴音は目を見開き大声で怒りの声を上げていた。
どうやら彼女は、その名で呼ばれるのを嫌う相当な理由が何かあるようだ。
「そう、熱くならないでください」
「黙れ!どうせ貴様は私のこの体が目当てなんだろう?」
「おおっ、流石は姫様理解が早くて助かります」
「貴様が殺さないならここで舌を噛み切って果てるのみ!ウグッ!」
琴音がそう言って舌を噛み切ろうとした瞬間、近くにいた水兵によって猿ぐつわのようなものを噛まされてしまった。
「おっと、そうはさせませんよ?死なれては困ります、まぁ、一回ぐらいそんな状態でもやってみたいですけどねぇ……、どう思うよ艦長」
「流石は提督、趣味が悪い!」
「まぁな、さて、そろそろ限界だ、その縄を貸せ」
ドンッ!!
「なんだ?何が起きた?」
アマリスが琴音をまるでペットのように船にある自室に行こうとした瞬間、大きな爆発音が響いた。
「提督!艦隊が何者かに攻撃されています!」
「なんだと?もう出雲の連中は船が無いはずだろ!!」
ドンッ!ドカッン!
「どこにいるか探せ!」
急な爆発音と味方艦艇が沈められていることに驚き、今までの勝利ムードとはうって変わって、皆が恐慌状態に陥っていた。
「提督!」
「なんだ?」
「お、王国海軍です!」
「貴様もう一度言ってみろ!」
水兵の言葉に耳を疑ったアマリスは、思わず水兵にもう一度復唱を求めた。
「コンダート王国海軍が攻撃してきています!」
「な、なん、だ、と」
水兵のその言葉にアマリスは唖然としていた。
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