248.巨大モンスターとの激闘
「弾種徹甲弾に切り替え!装填急げ!モンスターの足を狙え!」
ヴィアラの発した命令により各艦艇は、先ほどの消極的な接近阻止の為の威嚇射撃とは違い、今度は敵モンスターに直接攻撃を仕掛ける。
狙いはモンスターの足だ。
運が良ければ、バランスを崩してそちらへの接近は阻止できるはずだ。
「照準よし!」
「主砲射撃用意よし!」
「一斉撃ち方用意!」
「てっぇ!」
再び爆音と衝撃とともに大和の46センチ砲9門が一斉に火を噴いた。
大和の主砲発砲と合わせるようにして、周辺の各艦艇も主砲を発砲を開始。
主砲の射程が短い艦艇(特に駆逐艦)はVLSからトマホークを放っていた。
そして数秒後には目標である巨大モンスターに直撃弾、または至近弾をだしていた。
着弾によってモンスターの周辺は煙や水柱に包まれていた。
「やったか?」
ヴィアラは双眼鏡でモンスターを食い入るように見る。
「……、もう少しで煙が晴れます……、目標健在ッ!効果が無いようです!」
「なんだと?」
煙の晴れた後にはそこには撃たれる前と変わらない姿で立っていた。
あれほどの砲撃であれば足が折れるか、衝撃で倒れているかと思ったのだが、それは甘い考えだったようだ。
足の外骨格は非常に固く大和の徹甲弾やトマホークであっても効果は今一つのようだ。
「敵モンスター味方艦にハサミをぶつけようとしています!」
「どの艦だ!」
「恐らく“こんごう”と思われます!」
全艦艇による一斉射撃によって流石のモンスターも怒っていた。
そのモンスターの怒りの矛先が艦隊最遠部に位置するイージス艦「こんごう」に向けられていた。
その頃、当のこんごうはエンジントラブルによって航行不能に陥っていしまい艦隊から離れてしまっていた。
エンジントラブル事態発見が遅れたため救助する為に向かってきてくれる船も遠く離れているので、艦隊に復帰するまで時間がかかっていた。
不幸は重なるもので、そんな状態のこんごうにモンスターの大きなはさみが接近していた。
「艦長!敵モンスターのはさみが本艦に接近中!」
「こんな時に!……、副長!」
「指揮預かります、総員合戦準備!」
「合戦準備!」
艦長から指揮を預かった副長はすぐさま近づくハサミを迎撃する為、攻撃命令を発する。
この艦の乗員もすでに実際に戦闘を経験していることもあって、発令から2分とかからず持ち場につき準備を整えた。
「合戦準備用意よし!」
「了解、右対空戦闘、CIC指示の目標」
「SM-6攻撃はじめ!」
「てっ!」
発令してから3分後には、SM-6(対艦・対空・対巡航ミサイル用のミサイル)が発射された。
「インターセプト5秒前……、マークインターセプト、目標依然としてこちらに向かってくる!」
やはり大和の46cm砲弾でも効果が薄かったモンスターの外骨格にはミサイルでも効かなかったようだ。
「主砲、CIWS攻撃はじめ」
「主砲撃ち方用意!」
「主砲撃ち方用意よし」
「主砲撃ち方はじめ!」
「てっ!」
いよいよモンスターのはさみがすぐそこまで接近してきていて、今にもぶつかりそうだったが。
それでもなお、艦長以下全員が何とか防げると信じ、54口径127㎜単装速射砲とCIWSによる最後の抵抗を試みる。
「目標今だ健在」
「まっすぐこっちに向かってくる!」
「駄目か!……、総員衝撃に備え!!」
「総員衝撃に備え!」
しかし、その懸命な抵抗むなしくハサミは勢いを止めることなくこんごうに向かう。
ぶつかってくることを察した艦長は乗組員全員に対して、対衝撃姿勢をとるように命令していた。
ゴンッ!
しばらくすると、鈍く重い音とともに艦内に強い揺れが起きていた。
「くっ!……、状況知らせ!」
「直撃は免れましたが右舷第一甲板中央に何かが当たり損傷している模様!その影響で艦内に浸水!負傷者複数!」
「ダメージコントロール!負傷者の収容急げ!」
直撃は免れたようだが、はさみのトゲのような部分が当たったため、右舷の第一甲板に穴が開いてしまっていた。
戦艦同士の砲撃戦を想定している大和やモンタナのような装甲であればもう少し軽い損傷で済んでいたかもしれないが、元々被弾することが余り想定されていないイージス駆逐艦の装甲では大きな損害となってしまう。
「応急的に穴はふさげたようです!」
「艦長!エンジン完全復帰しました!」
ただ幸いなことにダメージコントロールが迅速に行われたことによって沈没するようなことは免れた。
「了解、最大戦速でこの海域から離脱し艦隊に合流する!航海長」
「航海長、受けました、最大戦速!と~りか~じいっぱ~い!」
「と~りか~じいっぱ~い!」
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