247.巨大モンスター出現!


 艦隊に巨大な“蟹のようなモンスター”がこちらに向かってくることが確認されたとき、空母アメリカの連合艦隊司令官室内では“蟹のようなモンスター”対応についての意見が割れていた。


 「今すぐに大和とモンタナなどの戦艦隊の主砲で砲撃を開始すべきです」


 そう唱えるのは、今回連合艦隊参謀総長を務めるオルデント・リディア海軍大将だ。

 

 「そうしたら、島にいてまだ帰還してきていない海兵隊員たちはどうなるのですか!」


 そんなリディアの意見に反対意見を出しているのは、第一海兵隊遠征軍の作戦本部長ジャック・ジョンソン海兵隊大将だ。

 彼は元々連合艦隊首脳部と会議をするためにヘリで派遣されていた為、ちょうど乗り合わせていたのだ。

 ジョンソン大将はグレン大佐と同じく以前冒険者として中規模クランを率いるリーダーを務めていた人物で、彼はグレン大佐と対照的で、前線より後方で支援や指揮するのが得意なタイプだった(とはいえリーダーを務めるぐらいなので戦闘能力が低いわけではない、むしろグレン大佐以上あるらしい)ので、その経験をレノア大将に買われて今に至る。


「ジョンソン大将、では艦の一隻や二隻沈められてもいいとおっしゃるのですか?」

「そういうことではございません、まずは敵の弱点を探る必要があると思うんです、闇雲に撃って味方に損害が出ては元も子もありません」

 「そんな悠長なことを言っている場合ではありません!今は一刻を争うときですよ!」

「そのようなことは重々承知しています!ただ、まだあのモンスターの上には私の大事な仲間がいるんですよ!!」

「では、どうすればいいのか聞かせてもらおうか!!」


 意見の違いだけではなく、軍の所属の違い(とは言え海軍省所属)も手伝ってか二人は激しく言い合いをしていた。

 

 熱が入りすぎ、話が長引きそうだと判断したヴィアラはそんな二人の間に割って入った。


「一旦落ち着けリディア!それとレシアといったか?君の意見はわかる、ただそれなら具体的にどうすればいいのか示してくれないか?こちらも海軍所属の部下がいてそしてその部下達に任せている各艦艇に具体的な指示を出さないといけない、それは君自身指揮官の経験もあるだろうからわかるだろう?もちろん同じコンダート王国国民なのだから、彼らを見殺しにするようなことをするなんてことは考えていない、それこそ同じ国民……、いや、同じ軍人なのだから足並みそろえて行こうじゃないか!」

 

「ヴィアラ閣下、私としたことが、つい熱が入ってしまい、申し訳ございません、それとジョンソン大将に対して少し強く言い過ぎてしまい申し訳ない」

「いえ、こちらこそ出すぎた真似をしまい申し訳ございません……、一先ずここはヴィアラ閣下のおっしゃる通り足並みをそろえられるように時間は残されていませんが少し話し合いましょうか」

「そうだなジョンソン大将、一先ず私の考えとして、敵の足を止めない以上こちらに何らかの被害が出るのは確実、なのでまずは敵の足付近を狙って威嚇射撃をするのはどうだろうか?」


「俺もその意見に賛成だ、というかそれで行こう、ジョンソン大将何か意見はあるか?」

「あ、ありませんが、陛下!?」

 

 ジョンソン大将や他のその場にいた将官が驚くのは無理もないことで、突然司令官室に置かれている移動式の大型液晶ディスプレイにこの国の国王が映っていたのだから。


「悪い、回線をつなぐのに手間取ってしまったよ」

「全部聞いておられたのですか?」

「そうだよ、そちらの音声だけは聞こえてたから、だからさっきのヴィアラのご高説も聞いていたさ」

「……、恥ずかしいですよ」

「ん?何か言ったか?」

「いえ、何も」

「そっか……、そんなことより時間がないから、話を進めるぞ……、一度各戦艦に主砲で威嚇射撃してもらって、それでもこちらに向かってくるようだったら敵本体ではなく、直接足かハサミを狙って戦意をくじく。敵がもしそこで硬直するようだったり撤退を始めるようなら、少し危険だが、救助隊を向かわせて海兵隊を収容しなさい、その間常時海兵隊と連携を取り続けるように!以上!各自行動を開始」




「「「「了解!」」」」





 そのころ大和に乗るエミリア遠征統合艦隊司令や艦長以下乗組員はいたって冷静だった。

 それは何回か戦闘を経験していたからなのかもしれない。

 そして現在の大和艦長はエミリアが大和艦長だった時の副長のエレン大佐が務めている。


「エミリア司令、連合艦隊司令長官から電文、主砲にて巨大モンスターに威嚇射撃を開始しろと来ています」

「わかった、艦長!合戦準備!」

「合戦準備!」

「合戦準備!」


 合戦準備の号令が出た途端、一斉に将兵が各配置につき瞬く間に戦闘準備が整った。

 これも実戦経験のたまものだろう。

 

「各部合戦準備用意よし!」


「右砲戦、30度、目標巨大モンスター前部脚部より100m!」

「緒元入力完了!」


 大和含め二次大戦の艦艇はすべて、港に入っている間に近代化改修を施していて、FCS(火器管制システム)やレーダーを積んでいる。

 その為今まで射撃時に測定を測距儀等で行っていたのを、FCSとレーダーのおかげでそれが必要なくなった。


「主砲射撃用意よし!」

「弾種榴弾一斉撃ち方用意!」

「てっぇ!」


 爆音と衝撃とともに大和の46センチ砲9門が一斉に火を噴いた。

一拍遅れてモンタナなどの戦艦から主砲が一斉に発射された。


「弾着3秒前、2秒前……、今!目標地点に着弾と水柱確認!」

 着弾と同時に爆発した砲弾は大きな水飛沫とともに水柱を上げていた。

 しかし、モンスターは動きを止めずゆっくりとだが、こちらに徐々に進んできていた。


「モンスターの様子はどうだ?」

「依然としてこちらに向かってくる模様!」

「何か通信は来ているか?」

「少々お待ちください……、連合艦隊司令長官から全艦隊充てに電文「全司令に告ぐ、直ちに隷下艦隊に配備されている全艦艇の主砲の砲撃を開始せよ、目標は別途指示する」……、と来ております!」

「エミリア司令いかがなさいますか?」

「艦長は指示通り再度砲撃!通信で私の配下の艦艇にも同様のことを通達!」

「「「「了解」」」」

 

 「弾種徹甲弾に切り替え!装填急げ!」

 

 

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