222.キーレ駅へ

 

 アルダート駅に到着した俺とメリア、イリア、ローザ、ヴィアラの4人は、そのほかのみんなと一旦別れすぐに南海新幹線に乗り換えて一路キーレ駅へ向かう。

 他のメンバーは各々仕事があるので、残念そうに戻っていった(約一名は黒い瘴気を発生させ抵抗を試みたがメリアの一喝によって鎮められた)。


 ちなみに今までベルやエレシアやステラが同行してきていたのは、体験乗車ということが表の理由であったようだが、それは実際のところこじつけのようなもので、実際のところ彼女たちが「私たちもワタと夜も一緒に過ごしたい!」という意見があったからなのだという。

 当初はこれをメリアが突っぱねたのだが、エリサとアリサからの直接的な働きかけもあってこれが実現したらしい。




 車両は今まで乗ってきたN700S2ではなくN700Sに乗っていく(とはいえ最高速が360㎞/hが出せるように改良されているが)。

 車内では相変わらずイリアがはしゃいでいる。


「イリアさん、今回は何がそんなにお気に召したのですか?」

「ワタ!ねぇ、このペットボトルっていうのはこんなに軽くて薄いのにこんなにいっぱい液体が入るのね!しかも中身がシュワシュワしているものもあるのね!」


 どうやらイリアはペットボトルに入った炭酸飲料が気に入ったようで、すでに窓際には空になったペットボトルが並んでいる。

 イリアは(というより護衛のローレライ隊の面々が)アルダート駅での数分しかなかった乗り換え時間の間に、階下で駅員向けに先行営業をしていたコンビニで大量に仕入れて来たようで、誰も座っていない席や上段の荷物スペースにコンビニ袋が大量に置いてあった。

 恐らく今頃、そのコンビニの棚という棚はすっからかんの状態になっているはずで、その補充に店員さんは忙殺されていることだろう。

 というか、それ以前に会計や袋詰めが地獄のようだったであろう。


「飲んでみてどうでした?」

「最初はさすがに飲むのに一苦労したけど、飲み続けてみると慣れたわ!それにこれ味の種類がいっぱいあるのね!さっき行ったコンビニってところでたくさん買ってきちゃったわ~~、ローザはどうだった?」


 ローザはイリアと対面する形で座っていて、その手には菓子パンが握られていた。


「お母さま!そんなことよりこのパン美味しいですよ!こんなに甘くておいしいものは始めてですわ!」


 ローザは菓子パンに興味を持ったようで、手に持っているメロンパン以外に膝の上にはいろんなパンが山積みになっていた。


「ちょっとローザ、それをよこしなさい!……モグモグ、んんっ!おいしいわね!」

「良かったですわ!……それよりワタ、この缶っていうのはどうやって開けるのかしら?あと、これも開け方がわからなくて……」


 すると、ローザは俺を質問攻めにしてきた。

 しかも、その質問は一向に途絶えることがなく、結局キーレの駅に着いてメリアによって強制的に止められるまで止まらなかった。



 キーレ駅にはアルダート駅で乗り換えてから2時間30分後には到着。

 キーレ駅から今度は電車(E233系3000番台)に乗り換え、最終目的地である、キーレ統合基地内のキーレ貨物ターミナル駅(軍専用貨物駅)に向かった。

 キーレ貨物ターミナル駅に着くと、早速出雲国使節団一行等が滞在している基地内の海軍総司令本部庁舎横の士官専用宿舎へ車に乗って直行した。


 このキーレ統合基地は元々あったキーレ海軍基地に陸軍憲兵隊司令部や沿岸警備隊、陸海空軍や沿岸警備隊の航空部隊が共同しようする広大な飛行場が北飛行場(5000m滑走路×2(オープンパラレル方式)+横風用滑走路3500m)と沿岸から海上に100m離れた埋め立て地に洋上滑走路(4000m滑走路×4(オープンパラレル方式))などが合わさった超巨大基地のことだ。


 これと合わせて海軍基地も大幅に改良され、ワタが訪れたときには帆船しか接岸していなかったようなところに、空母や戦艦などが40隻以上泊められるように係留施設の増築・改良工事やシーバースの設置。艦艇の補修をするための乾ドック(2000m(長くなっている理由は後々ご説明します))をNo1~10まで用意してある。

 さらに艦艇や航空機の燃料や砲弾等各種補給物資を貯蔵する専用の区画も整備され、そこには全艦隊(今のところ10艦隊)を5年間活動できる分の備蓄がされている。


 そしてこの港には現在第1・2・3・4・6・8・9艦隊が集結している。

 第8・9艦隊は最近新設されたばかりの艦隊だ。


 第8艦隊

 旗艦:高雄

 第4遠征打撃群

 第7護衛艦群

 第8護衛艦群

 第27駆逐隊

 第28駆逐隊

 第8戦隊 (ビスマルク・シャルンホルスト)

 第17戦隊 (キャンベラ・クインシー)


 第9艦隊

 旗艦:愛宕

 第5遠征打撃群

 第9護衛艦群

 第10護衛艦群

 第29駆逐隊

 第30駆逐隊

 第9戦隊 (日向・伊勢)

 第18戦隊 (ピッツバーグ・セントポール)


 車窓からは、戦艦長門・陸奥・武蔵と空母キティホーク・コンステレーション・アメリカが港に勢ぞろいしているところが見られ、沖合にあるシーバースにも多くの艦艇が停泊している様子が見られる。

 こんな光景は元の世界では絶対に見られないだろう。


 それを眺めているうちに、士官宿舎についていた。

 車から降りると、白い第一種礼装に身を包んだミサが出迎えてくれた。

 一応これから、国賓を迎えるので俺もミサと同じ第一種礼装に身を包み、他の3人は女王が着そうな白い装飾が施されたドレスを着ている。


「陛下、長旅ご苦労様です」

「ミサか、出迎えご苦労様、姫君は?」

「はっ、今は貴賓室にてお待ちいただいております」

「そうか、では行こうか」


 士官宿舎に用意されている貴賓室に行くと、そこには出雲国遠城帝の長女である遠城(えんじょう)千代(ちよ)が座っていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る