214.カフェで一息

 

 お店に入ると明るく元気な声で出迎えてくれた。

 内装には木材が多く使われ、最近できたこともあって木材のいい匂いが漂っていた。

 明かりは暖色のものを使っていて、落ち着いた雰囲気を演出してくれている。


 実際に入ってみるとすでに席では、エンペリア王国女王が来るまで手持無沙汰となっていた通称ローレライ隊が食事を楽しんでいるところだった。


「陛下に敬礼!」


 彼女たちは俺たちが来たのを知るや否やその場で直立し挙手の敬礼で出迎えた。

 それを見て俺は自然に答礼していた。


「みんな、楽にしてくれ」


 俺が答礼をするのと同時に、店の厨房から店長と思しきタキシードのようなものを来た初老の男性が出てきて、俺たちを出迎えてくれた。


「両陛下、ご来店お待ちしておりました、二階の奥の席が空いておりますのでどうぞそちらにおかけください」


 そう案内された俺たちは、案内に従ってお店の2階の奥にある大きなテーブル席に座ることにした。

 そこまでに行く途中、すれ違う店員すべてが手を止め、こちらに向かって深々とお辞儀をしてきてくれた。


 席につくと俺たち一人一人にメニュー表が渡された。

 そこにはオムライスやステーキ、スパゲッティなどの洋食、うどんやどんぶりもの等の和食、ラーメンやチャーハンなどの中華料理が書かれていた。


 さらに今の時間はモーニングセットも用意されていて、こちらは和食か洋食のどちらかから選ぶようになっている。

 ここで俺は白米と焼き鮭とみそ汁付きの和食モーニングセットを頼むことにした。

 やはり元日本人としては、朝に白いご飯が食べたくなってしまう。

 すると、それを見た彼女たちは全員俺に倣って和食モーニングセットを頼んでいた。


 この光景はまるで、海外に行って言葉がわからない旅行者が、隣の席の人が食べているおいしそうな料理を指さしてあれと同じものをくれといっているように見える。


 そして仲良く朝食を取り終えた俺たちは、さすがに出迎えが来てくれているだろうと思い、代金を支払い、店を後にした。


 しかし、外へ出て周辺を見てみても、出迎えはまだ来ていなかった。


「ローザ、本当に迎えが来るんだろうな?」


 流石にここまでくると俺もローザを疑ってしまう。


「ええ、確かに迎えに来るって言ってたもの!」


 しかし、ローザは迎えが絶対来ると思って疑わない。


「本当に、本当なのねローザ?」

「メリア、信じて!」

「今は信じてあげる」

「ありがと!」

「で・も、もし違っていたら……ね?」

「う、うん」


 メリアの最後の言葉が何を意味するのかは分からないが、それ以降ローザは今までののほほんとした表情から、何かに追われている人のような目つきに変わっていた。


「ワタッ!まだ来ないならあのお店行こ!」

「おい、おい、そんなに引っ張んなさんなって……みんなも行くぞ~」


 キューレは目をキラキラさせながら俺の腕に抱きつき、そのまま引っ張るようにカフェへと向かった。


 (おっと、キューレちゃん、柔らかいのが当たってるぜ……っと、いけない、後ろから殺気が……)


「ワタサマァ?」

「こらっ!!ベル!」


 パシッ


 またもやカオスモードになり黒い瘴気を出し始めたベルは、メリアに頬を叩かれ正気に戻った。


「今度おんなじことやったら、グーで行くからね?」


 メリアはベルににこやかに警告していた。


「は、はい」


「さて、私たちも行くわよ~」

「「「はーい!」」」


 とりあえず迎えが来るまでカフェで時間をつぶすことにした。

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