213.ベレカ駅2



 このベレカ駅は “電車線”と“列車線”を分離するために二つの駅によって構成されていて、コンダート王国鉄道管理駅(電車線専用)とエンペリア王国運輸省管理駅(列車線)で完全に別れている。

 とはいえ、両駅をつなぐ複線が設けられているので、車両の行き来はできるようにはなっている。


 エンペリア王国運輸省管理駅の駅舎とホームは(在来線ホームは4面8線)屋根などは木造でつくられていて、雰囲気は昭和初期を感じさせるようだ。

 駅構内には小さな売店や食事処、簡易的な待合室もある、そして改札を出るとすぐに冒険者ギルドの受付が併設されていて旅客に力を入れないといっていた割にはよくできている。


 一方でコンダート王国鉄道管理駅舎(在来線ホーム2面4線・新幹線ホーム2面6線(中線は電留線))はアルダート駅のように現代的で頑丈な鉄筋コンクリートでつくられていて、駅構内にはアルダート駅にも作る予定のものと一緒のコンビニやカフェ、レストランができていた。




 駅に着いた俺たちは一先ず出迎えが来ていると思うので、駅から出ようとした。


「見て!あっちに大きな山が見える!」

「城も見えてるわ!」


 彼女たちはまるで旅行に来たかのようにはしゃいでいる。

 彼女たちが見た山はエンペリア王国内で最高峰のファリディシア山で9971mもある。

 そのファリディシア山は冬が近づいてきたことを知らせるかのように、すでに4000mぐらいまで真っ白に染まっていた。


 そしてこれから行くローザの居城でもあるべレカ城は、小高い山の上に立っていて、雰囲気はドイツのノイシュヴァンシュタイン城のようだ(要は白くてきれいなお城ってことです)



 改札から出た俺たちであったが、そこには工事関係者や鉄道関係者以外見当たらなかった。

 正式開業前ということもあってか駅長や駅員すらいない。


「ローザ、お迎えがいないようなのだけど?」

「おかしいわね、確かにこの時間であっているはずなのだけれど……」

「ローザ、その情報は確かなの?」


 メリアは朝食をとっていないこともあって、少し苛立ちながらローザに詰め寄っていた。


「ええ、城を出る前にお母さまにそう聞きましたわ、でももしかしたらお母さまのことだから、のんびり城からこちらに向かってきているのかもしれないわ」


 一方のローザは、さも遅れてくるのが当然だというように何も悪びれることなくそう言ってのけた。


「あ・な・た・ね!どうっ……あっ……」

「まあまあ、メリア落ち着いて」


 それを言われたメリアは我慢ならず、ローザの襟をつかみそうになったが、そんなメリアを落ち着かせるために俺はとっさに抱きしめていた。


「駄目だよ?暴れたら、ね?」

「う、うん」


 するとメリアは、さっきまで怒りが爆発していたとは思えないほど今は大人しい。

 その光景に、それ以外の女性陣の強い視線がこちらに向けられていた。


「んんっ、来ないようなら待つまでだね、ちょうど新幹線の駅にレストランがあったからそこで朝食にしないか?みんなどう思う?」

「「「「賛成!!」」」」


 いつ来るかもわからない迎えをここでずっと待っているわけにはいかないし、朝起きてから何も食べていないので、レストランでとることにした。


 このレストランは元の世界でいうところの、ガ〇トみたいなところで、和洋中すべての料理が出てくる。


 そして、なぜここは旅客営業開始前にも関わらず営業しているのかというと。まず、一つに工事関係者や鉄道関係者に向けての営業をしてみてこちらの世界の人たちの口に合うかどうかを知るためということ、二つ目にOJTを行いパートタイムの人や社員を育て、今後このレストランをコンダート王国内の駅ナカに出店していくときの支えとなってくれる人材をつくるためだ。

 そしてもう一つが、今回俺たちが来ることが分かっていたので、せっかくだからここで召し上がっていただこうということ理由があるようだ。


 お店は新幹線の高架の柱の間にすっぽりと収まっていて、外観は周辺をあまり損なわないように色は茶色や黒を基調としたものを使っている。

 店先の花壇には色とりどりの花が植えられていて、暗い色の外観を補っているように見える。



「さぁ、入ろう」

 そういって俺はお店のドアを引き中に入った。


「「「「いらっしゃいませ!」」」」


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