205.近況報告2


「このような時こそです!あなたは犠牲になられた民をどうでもよいとでもおっしゃるのですか?」


「今は陛下のおかげでここまで帝国をやっと押し込めたのだぞ、とはいえまだ帝国はどんな手を使ってくるかもわからん状態で軍の動きを緩めるわけにはいかないんだ!それに国王陛下直々に現場を視察され、本当はよくはないが前線に陛下自ら武器を手に持ち部下とともに戦っている、この光景を現場の兵が見てどれだけ勇気づけられていることかわかるか?苦楽を共にしていただいているからこそ今があるんだ……失礼少々度が過ぎてしまいました、しかしそれこそ内政は首相閣下のお仕事ではないのでしょうか?そのための各大臣でしょうし……」



「そのような陛下の武勇伝は各方面からお伺いしております、しかし国家元首たる陛下が先陣切手死の危険を顧みず戦闘に参加されているのはいただけません、ただこれによって現場の兵の士気が上がりその後に良い影響が与えているのは確かでしょう、だからこそ今度は内政にも力を入れていただき我々が持っていないようなお考えをもって国王陛下にご助力願いたいのです……それと今まで事態を静観していたローズナイツにもそろそろ本腰を上げていただきたいとも思っています」



「私は思うに、我々の“ローズナイツ”にはまだ手酷い被害が出ていないから、そこまで深刻に援軍要請を考えなくてもいいとは思うがな?最近ハミルアーミーが積極的にこれに対処しようとクランを上げて動いているようだし、さらに試験的にハミルアーミーが持つ工場で生産したM4を何十丁か生産して実践投入して事態改善に乗り出したりしているようだし」


 エレザは今まで興味がなさそうに聞いていたが、ユリアの最後の言葉に反応して不機嫌気味に突っ込んでいた


「しかし、周辺住民にすでに犠牲者が出てしまっていると……」

「言われなくてもこっちだって必死こいてモンスターと戦ってんだよ!現場のこと本当に分かっているのか!」


 エレザはユリアのその一言についに、キレてしまい怒鳴っていた。


「首相閣下、恐れながら申し上げますと現場ではすでに軍以外の機関、例えば発足したばかりの国家警察省所属の機動総隊(機動隊のこと、陸軍でいうところの軍団規模に相当)も動いていますし、鉄道武装警備隊も鉄道施設周辺や建設予定地にいるモンスターの対処を始めていますので、軍が可及的速やかに対応するときではまだないかと思われますが?その点情報共有は成されていないのでしょうか?」


 何がそうさせているのかは話かからないがセレナはここぞとばかりにユリアに対して食って掛かっていた。


「まぁまぁ、エレザとセレナ落ち着いて、ユリアにはいつも内政の取りまとめ頑張ってもらっているんだからそこまで言うことないだろう?それを行ってしまえばユリアも少し言い過ぎではないか?」

 議論がヒートアップしこの場が険悪なムードが漂い始めたとき、さすがにこれではまずいと思ったワタはすかさず割って入った。


「「「ですが!」」」

 興奮冷めやらぬ3人は、国王であるワタに対してまるで、獲物をとられそうになりうなっている犬のようだ。


「一旦落ち着いてくれ……要は、君たちは今この国が少しは帝国の脅威を取り除くことはできても不安定な状態が依然として続いていて、一向に安定しないから、その不安が今の君たちをそうさせているんじゃないのかな?」

「そうね、ワタの言う通りだわ!みんな確かに色々ここまでも頑張ってくれているけど、その結果が薄いか出ていないからなおさらそういう気持ちになっているんだよね……」


 3人を落ち着かせようとしているワタに、援護射撃のようにメリアは同意を示す。


「メリア、ここで一つ提案なんだけど、これから軍事の戦略に関しては一回メリアに担当してもらって、内政は俺がこれから担当するっていうのはどうだ?もちろん俺も軍事にも関与はするけども」

「そうしましょう!それこそ兵器の召喚は私がしようと思えば出来るし、兵器の運用に関してはエレシアもヴィアラもエリサも理解してきているだろうし」

「じゃあ、そうしようか、ただこの後は出雲国への訪問があるから、出雲国から戻ってきてからお願いしていいかな?メリア」

「うん!!もちろんよ!」


「ということで、ユリア、これで一つ不安要素は取り除かれたよね?エレザとセレナもこれで文句ないよね?」

「ありがとよ!」「はっ!」

「はっ、はい!ありがとうございます」


 これで、ようやく3人は理解してくれたようだ。

 それを見て俺はホッと胸をなでおろしていた。


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