206.近況報告3

 

「で、あとは何があるの?」

 話が途中でそれていたので俺はユリアにその先を促していた。


「え、えとですね、列挙しますと、現代医学と魔法医学を合わせた医療施設の開設、教育機関の開設、食料品の質と生産性の効率化と向上、食品加工工場、その他の生産品の大量生産をするための工場、武器や艦船をつくるための工場、自動車道の建設、ライフラインの普及、発電所建設等々山ほどありますが……」


「良し、じゃあまずやることを俺が決めるからそれから順番にやっていこうか」


 俺はそういうと近くにあった紙とペンをとり、まず初めに手を付けていくことを箇条書きで書き出していった。


 医療機関の開設を始める前に準備として、医学を学ぶための専門学校・医科大学及び付属病院、薬学研究所・薬科大学、医療魔術学校、魔術学校等の開設を優先して行う。

 医学系の教育機関の開設と同時並行で農民や庶民でもはいれる教育機関もつくっていきたい(幼稚園・小学校・中学校・高等学校)、そして、これと現在王立学校として設立されているものもすべて、無償でかつ義務教育(幼稚園~高校まで)として法律まで整備していきたい。



 食糧事情は戦争状態の現在でも安定して供給できているが(ただし冬季のみ食糧がかつかつの状態に陥る)、今後のことを考えて何かしらの農業改革をやっていきたい。


 その一環として、まず冬でもある程度安定した供給ができるようにハウス栽培ができるようにしたり、大規模な農園をつくり収穫もできるだけ人の手を使わず機械によって収穫する、穀物等日持ちするものは巨大な貯蔵施設をつくって保存する、これに関連して食事のレパートリーを増やすために食品加工工場をつくる……等々


 暴動や蜂起、内乱、クーデター等の犯罪行為が増えてきて対応に苦慮する場合も出てくるだろうから、これに対応するために法整備改革もしていきたい。


 さらに国内にいる可能性がある帝国の諜報員や工作員の取締りや調査もしなければならないので、それについても法整備をしたい。


 これに乗じてこの後宮での法律のようなものを作りたい(その大きな理由としてとある人によってこの後宮で暴れられたらたまらないからだ)


「と、まぁこんな感じかな!」

「おお!さすがは国王陛下、ありがとうございます、では早速明日から始めていきましょうか?」

「いや、悪いけど明日からは無理かな、というより明日はエンぺリア王国の客人を迎えに行くために寝台列車で俺らはお迎えに行くことになっているって、カイル外相から聞いていないのか?」


「はっ!失礼しました、私としたことが……」

「いや、いいさ、君も相当疲れているようだからね、今までも一人で頑張ってくれたんだろう?口調も最初そんなじゃなかった気がするし……って、大丈夫かい?」

「……っく、うぐ、大丈夫っ、でず……ホントは一人で寂しかったんだよーーーーうえーーーーん」


 ユリアは俺の言葉をきいて、ついに我慢できなくなったのか泣き出していた。

 いままで一人だけで抱え込み誰にも深く相談できず苦しみながらもここまで頑張って来たからなおさらだろう、そこに俺が手を差し伸べたのが決定打となったようだ。


「よしよし」


 俺は泣き続けるユリアを抱きしめてあげていた。


 俺はユリアを泣き止ませている間、メリアはセレナに今の軍の状況を報告させた。


「セレナ、今の軍の状態について話してもらってもいい?」

「はっ!ではまず私が聞き及んでいることまでをご報告いたします」


 以前カルロゼでの空中戦後投降し臨時捕虜収容所に収容されていた元帝国空軍のハルト・カイル大将と麾下部隊は、南部航空方面隊に全員仮配属することとなった。

 これは、ハルト・カイルたっての願いらしく、臨時捕虜収容所で読んでいたこちら側の軍事情報誌を読みなおさらこちらの軍門に下りたいとの意思が高まったようだ。

 その後、カイル大将は一緒に収容されていた部下たちにいかに王国軍が今優れているかを説き、満場一致で王国への亡命を希望したようだ。

 それをメリアが承諾し、妹のアリサが大臣を務める空軍に仮配属させることを決めたのであった。

 王国軍への仮所属を外すには対帝国戦闘時に一切の躊躇なく帝国兵に対して攻撃ができることが認められた場合で、それができなかった場合すぐに収容所行かそれがひどい場合は強制退去命令か銃殺刑に処される。


 カイル大佐(亡命後一旦降格させた)と麾下部隊は始めたばかりの航空教育課程を王国兵と一緒に受けてもらうことにした。

 これにはしっかりとした目的があって、空軍兵として差別なくお互いを強調しあい紳士のような存在になってほしいという目的が込められている。

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