197.アルダート駅2


 そのすぐ左隣には今回の鉄道を敷設運営管理するにあたって組織された、国土交通省直轄のコンダート王国国有鉄道(Kingdom National Railways:KNR)の総裁エルデバラン・テーシャがいた。


 彼女はまさに「大人の女性・キャリアウーマン」という言葉がぴったりと似あうような黒いぴっちりとしたスーツを豊満な体に纏い、藍色のロングの髪をハーフアップでまとめ、特徴的な赤い眼鏡をかけている。

 そんなテーシャはアネッサからの紹介が終わると俺とメリアに向かって深々とお辞儀をしてきた。

その時の俺は彼女の美貌と胸の谷間に目をとられそうになっていたが、俺の下心に気づいたのかメリアは俺に少々引きつった笑顔をこちらに向けてきていた。


「どうかしたかなぁ?」

「い、いえなんでもございません……、んんッ、失礼続けてくれ」


 そしてさらにその後ろには国土交通省鉄道警備局局長のエルデバラン・サッシャと同局鉄道武装警備隊アルダート駅“警備師団長”エルデバラン・アリアと警備隊員たちがぞろぞろと後ろにいた。


 テーシャ(長女)、サッシャ(次女)、アリア(三女)は3人姉妹で、テーシャとサッシャ、アリアは姉妹ということもあって髪型以外ほとんど似ていて、サッシャはテーシャと同じく黒いスーツに身を包み藍色のセミロングをポニーテールで後ろにまとめ、アリアは後ろにいる配下の隊員たちと同じ装備(ヘルメットではなく黒いベレー帽)藍色の髪をストレートセミロングにしている。


 彼女たちは元冒険者ギルドのハミルアーミー所属で、今回ハミルトン・エレシアからの推薦(要請)でこの鉄道関連省庁の幹部として出向させていた。


 そして国土交通省と国有鉄道の発足とともに、国有鉄道の保有するすべての場所などの治安維持とモンスターや敵性国家からの保護を目的とした専門部隊の鉄道警備局を発足させていた。


 中でも鉄道武装警備隊はその中核となる部署で、役割としてはお巡りさんと同じように駅や関連施設の巡回なのだが、この武装警備隊に関してはそれだけにとどまらず、もしそこで犯罪行為が行われていればもちろん逮捕することが可能で、犯罪の事後であっても捜査する権限も持つ。


 モンスターやスパイ、武器を持ったテロリストなどが現場にいた場合、持ち合わせている火力を最大限に生かして対処することができるようになっている。


 そして、発足理由からして国有鉄道が所有する敷地内でしかこの権限を使えなさそうに見えるが、鉄道武装警備隊は捜査や戦闘行為に関しては場所の制限を受けず、ある程度自由に動くことができるようになっている。


 そんな、鉄道武装警備隊は各管区(中央・北・南・東・西)の最重要大規模駅に師団規模の基幹部隊を配置し、その駅からその駅長が管理する管区内を基本的な活動範囲になる。

それ以外の駅にも部隊が配置されているが上記より規模を小さくして配備されている。


 武装警備隊の武装はRemingtonM870、SIG516、SIG716(マークスマン)、SIG320(全隊員)でこのほかに催涙ガスグレネードや閃光発音弾、ライオットシールド、全隊員が防弾(class IV、7.62×51㎜弾まで防げる)防刃チョッキとFASTヘルメット(指揮官は黒のベレー帽)を着用している。


 そして、ここにいる鉄道武装警備隊の面々のほとんどがもともと冒険者ギルドにいた猛者たちで、中でもエレザがクランリーダーを務めるローズナイツから来ている、それ以外は元衛視隊や軍の経験者が占めている。


 「君たちがいれば鉄道施設に何かがあっても安心だな!」


 俺はアルダート駅警備師団長のアリアが緊張しているのか少し顔がこわばっていたので声をかけた。


 「お褒め頂きありがとうございます、しかしまだまだ練度は低いので、今後実践的な訓練などを行う予定です」


 「とは言え、君たちはもともとあのエレザのもとにいたんだろう?大丈夫だ、きっとうまくいくさ!」


 「はっ!精一杯やらせていただきます!」

 

 「そろそろ場所を移動しない?」


 「おっと、そうだないこうか、アネッサ駅長案内してくれるかい?」


 「はっ!ではこちらに」


 メリアに促され、一行はホーム全体が見渡せる場所に向かった。

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