189.防空戦と空挺降下2



「ヴェガ13、ヴェガ14~24、全機敵航空部隊に対して攻撃を開始せよ!圧倒的不利な状況ではあるが、増援が来るまで出来る限り時間を稼げ、健闘を祈る!ブレイク!」


 意を決した第302飛行隊は圧倒的な航空不利の状況ながら攻撃を開始した。

 そんな不利な状況がかえって隊員のやる気を出させたのか、敵を次々と装備している04式空対空誘導弾(短距離)と99式空対空誘導弾(中距離)で落としていき、ミサイルがなくなっても20㎜バルカン砲でさらに撃墜していった。


 とはいえ、いくら兵器的な優位に立てたとしても数の上では圧倒的な不利な状況は好転できず、第302飛行隊は徐々に防戦一方に陥っていた。


 真後ろに竜騎兵の接近を許してしまったとある機体は、やむなくフレアを一気に放出させ、竜騎兵を何とか追い払う場面も見られた。


 その状況になっていることを近くにいた第301飛行隊は認知していたが、輸送機を護衛する任務があるのでどうしても動けないでいた。


 対する帝国軍側は、敵の一番の脅威であったミサイルを撃ってこないことが分かってから、積年の恨みを晴らすかのように積極的に攻撃を仕掛けてきていた。

 特に竜騎兵は旋回性能がレシプロ機並みにあるので、ドックファイトになるといくら戦闘機といえど後ろをとられてしまう場面が度々あった。


 さらに生き残った輸送魔導船からはバリスタ(弩)による攻撃もあり、まさに第302飛行隊は危機的状況に置かれていた。



「ヴェガリーダー、ヴェガ13、あと5分で第4・5航空団がやってくる、それまでもう少しの辛抱だ!」

「ヴェガ13、了解!!」


「ヴェガ13、ヴェガ14~24、聞いたか?もうすぐ救援部隊がやってくる!それまで耐えろ!!」


「「「了解!」」」


「(クソっ!まだ増援は来ないのか!これではせっかく陛下から賜ったこの機体を失ってしまう……)」


 数分後、セレンデンスから急行してきた第4・5航空団が到着してきた。


「ノヴァリーダー(第4航空団)、ヴェガ13、待たせたな!」

「アンタレスリーダー(第5航空団)、ヴェガ13、よく頑張った!あとは任せろ!」

「ヴェガ13、アンタレス・ノヴァリーダー、救援感謝します」


 救援が到着してしばらくすると、到着した戦闘機から次々に大量のミサイルが放たれていき、竜騎兵や輸送船はそれらから逃れることができずあっけなく爆散していった。

 この圧倒的な戦力の前に一瞬にして敵は葬られていった。


 さらに時を置かずして、第1・2航空団・第23近接航空支援団も救援に現れ、先ほど全滅させた飛行部隊後方にいた200機に対して攻撃を仕掛け、見事全機撃墜させていた。

 これにより敵飛空艇及び竜騎兵全機撃墜し航空優勢が再び保たれることとなった。

 一時はこちら側にも初の被撃墜が出てしまうかと思ったが増援部隊のおかげでそれも防ぐことができた。





 空域に敵がいなくなったのと同時刻、無事に近衛第三師団を乗せた近衛空挺輸送航空群はカルロゼ上空に到達していた。

 すでに降下地点は第301空挺連隊の2個小隊が潜入していて、確保されていた。


「降下5分前です!」

 C-17グローブマスターⅢのロードマスター(空中輸送員(要約:貨物室責任者))が、機内貨物室にいる空挺隊員に機体がもう間もなく降下地点上空につくことを知らせ降下の準備を促した。


 降下地点上空に到達するとC-17の機体後下部のハッチが開き、その入り口に向けて隊員が整列して降下の命令が下るのを待っていた。


「一番機、コースよ~し、コースよ~し、コースよ~し、用意!用意!用意!降下!降下!降下!」


 この機内放送が流れた後、貨物室にはブザーが鳴り響くのと同時に、次々に隊員は機外へと飛び出していった。

 これを見た敵は、まさか空から兵が下りてくるとは思いもしないだろう。


 少々バラバラになりながらもカルロゼの町の裏側に降り立った空挺隊員総勢1万8千名は、素早く統率のとれた行動であっという間に集合し、カルロゼの町の裏に集結し始めた敵兵に向かって攻撃を開始。


 裏側にいた敵兵達は陽動のための囮部隊であったので数は大したことがなく、数の暴力と質の暴力によって完膚なきまでにされていった。


 そこに逃走を図ろうとしていた敵の本隊は何を血迷ったのかこちらに向かって決死の突撃を敢行してきたが、それもあっけなく激しい銃撃によって即沈黙させられていた。

 この時本隊には敵の指揮官であったハルト・ジェスタ陸軍少将も含まれていたようで、彼もまるで雨のように降り注いできた銃弾に斃れた。



 その後、近衛第三師団本隊がカルロゼの町に入るころには内部で起きていた戦闘も終止符が打たれていた。

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