188.防空戦と空挺降下
空域に敵がいなくなったのと同時刻、無事に近衛第三師団を乗せた近衛空挺輸送航空群はカルロゼ上空に到達していた。
すでに降下地点は第301空挺連隊の2個小隊が潜入していて、確保されていた。
「降下5分前です!」
C-17グローブマスターⅢのロードマスター(空中輸送員(要約:貨物室責任者))が、機内貨物室にいる空挺隊員に機体がもう間もなく降下地点上空につくことを知らせ降下の準備を促した。
降下地点上空に到達するとC-17の機体後下部のハッチが開き、その入り口に向けて隊員が整列して降下の命令が下るのを待っていた。
「一番機、コースよ~し、コースよ~し、コースよ~し、用意!用意!用意!降下!降下!降下!」
この機内放送が流れた後、貨物室にはブザーが鳴り響くのと同時に、次々に隊員は機外へと飛び出していった。
これを見た敵は、まさか空から兵が下りてくるとは思いもしないだろう。
少々バラバラになりながらもカルロゼの町の裏側に降り立った空挺隊員総勢1万8千名は、素早く統率のとれた行動であっという間に集合し、カルロゼの町の裏に集結し始めた敵兵に向かって攻撃を開始。
裏側にいた敵兵達は陽動のための囮部隊であったので数は大したことがなく、数の暴力と質の暴力によって完膚なきまでにされていった。
そこに逃走を図ろうとしていた敵の本隊は何を血迷ったのかこちらに向かって決死の突撃を敢行してきたが、それもあっけなく激しい銃撃によって即沈黙させられていた。
この時本隊には敵の指揮官であったハルト・ジェスタ陸軍少将も含まれていたようで、彼もまるで雨のように降り注いできた銃弾に斃れた。
その後、近衛第三師団本隊がカルロゼの町に入るころには内部で起きていた戦闘も終止符が打たれていた。
第401歩兵連隊連隊長から爆撃要請が来る少し前。
第3航空団はとある大編隊とともにカルロゼから少し南に離れた位置の上空を飛んでいた。
この大編隊の正体は近衛第三師団の空挺部隊を送り込むために編成されたもので、セレンデンス基地から飛び立った空軍近衛空挺輸送航空群所属の95機のC-17ギャラクシーがその任務に就いていた。
このC-17グローブマスターⅢはアメリカ空軍が使用する軍用大型輸送機のことで、この輸送機はすべての装甲車や戦闘車両を搭載が可能なほどの積載能力を持つ。
今回はその輸送力を最大限に生かし空挺部隊を一機ごとに190名を乗せ何事もなく運んでいた。
しかし、この戦火の絶えない場所ではそう簡単には事が運ぶはずもなかった。
「レーダーコンタクト!60ボギー!」
一番先頭を飛んでいたF-2戦闘機のレーダーに推定60機の機影が映っていた。
これに対して第3航空団第302飛行隊12機が迎撃を開始した。
「ヴェガ(第3航空団コールサイン)リーダー、ヴェガ13~24、恐らくこのレーダーに映っているのは帝国空軍に間違いないだろう、攻撃開始せよ!」
「「「ラジャー」」」
第302飛行隊は大編隊から離れ帝国空軍機がいる思われる空域に急行した。
敵がいると思われる空域に到着すると、そこにはこちらと似たような考えをあちらももっているようで、兵員輸送飛空艇と護衛の竜騎兵隊が飛んでいた。
空挺降下をするわけではないだろうが、同じように兵員を空中輸送して前線まで直接運びそこで着陸した状態で兵員を下ろし本隊と合流させるつもりなのだろう。
「ヴェガ13、ヴェガリーダー、レーダーに新たな飛行集団を探知!その数200!至急増援を!」
第302飛行隊隊長機のヴェガ13のレーダーにさらにその後ろに爆撃部隊が飛んできているのを探知していた。
流石にこの数では対応できないと判断し本隊に増援を求めた。
「ヴェガリーダー、了解、残念だがこちらから君らに増援を送る余裕はない、その代わりに直ちに本部に救援要請を送る、それまで耐えてくれ」
「ヴェガ13、……了解」
「ヴェガリーダー、セレンデンスHQ、敵の増援を確認、至急救援願います!」
「HQ了解、直ちに第4・5航空団を向かわせる、それまで持ちこたえてくれ」
「ヴェガリーダー、了解」
第3航空団では対処不能になったのですぐにセレンデンス基地の司令部に救援要請をした。
この要請を受けて、セレンデンス基地で地上待機中だった第4・5航空団全機を急派させた。
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