168.陸海空軍合同ミーティング4


 この報告をしてくれるのは、先ほどの修羅場(カオス)にいたリディア中将はその時の自分の行動に反省している様子を少し見せながらも、しっかりと情報を伝えなくてはならないという気持ちが前に出ているためかいつもより声が大きいような気がする。


 現在、ウルス城近くの前哨基地にエンペリリア・ローザ王女殿下率いる“青の騎士団”とそれに随伴していた冒険者のステラというものが合流しレナ大佐の直接指揮下に加わったようだ。


 ローザと行動を共にしていた冒険者の名前が今初めて公開されたことに俺は当然驚きを隠せなかった、それもそのはずで、以前俺がこの世界に来て間もないころ、セレデア周辺の森で助けたあのステラだというからだ。


 後で聞いた話だがステラはどうやらあの後俺の近くにいても足手まといにならないために為に強くなろうと思ったらしく、一人で色んな所で修業を積んでいたらしく最高難度のクエストにも一人で挑み見事これを達成したらしい、そしてその甲斐もあってかステラの冒険者ランクはLランクまで上がっていて、巷では一人でしかクエストをしないことも手伝って「一匹剣姫」と呼ばれるようになっていた。

 そんな話を聞きつけたローザがぜひ自分の右腕としてついて来て欲しいととある日言ってきたらしいが、ステラはすぐに断った、しかし理由をステラがローザに聞くと一変、絶対ついていくと言ったらしい。

 ちなみにその時ローザは「あなたという強力な右腕とともにワタの元に馳せ参じて、あの私の愛する人を窮地から救ってやるんだわ!」といったらしい。


 レナ大佐率いる陸軍特殊作戦軍第一連隊(通称メランオピス隊)は、ウルス城内の情報収集はほぼすべて終了し、準備も最終段階に入ったと報告を挙げてきている。

 ウルス城内は悲惨な状況になっていて、兵士はほぼすべて流行り病によって死に絶えたか今も苦しみ続けている状況だ、しかし、城内にはまだ生き残りが存在しているそうだ。


 次に東部侵略軍総司令官(王国側呼称)兼ウルス城占領軍司令のエレクサンドラ・ガンテ大将の情報についてだが。 

 彼は帝国軍内でもかなりの実力者のようで、これまで前線に自ら出ていき戦った戦場では指揮官としての作戦指揮もさることながら強力な魔法や華麗な剣技によってすべて自軍を勝利に導いていたようだ、さらにその作戦指揮にも活かされる頭の良さを自身が持つ領地政策などでも発揮していたりと、そのほかにも様々なことに貢献してきているようだ。

 そして、今回こうして帝国軍南部侵略軍総司令官(帝国側呼称)に任命されたのもこれらの功績などが評価されたからであろう。


 しかしそんな彼には大きな弱点がある、それは女性に対する“欲”だ。


 それは常時周辺に露出が多い服を着せた女性を多数侍らせていて、その女性たちと時間も場所も考えずかわるがわることにおよぶのでその時間帯はそれに熱中して何も考えられなくなり、さらにその部屋や周辺には護衛すら近寄らせないからだ。

 しかもこの女性たちは皆強制的に連行されてきた所謂“奴隷”達のようで、中にはコンダート王国領土内で捕らえられたものや獣人やエルフ等といった種族も含まれるようだ。

 作戦開始時にも恐らく彼は護衛のいない無防備なところでことにおよんでいると思われるので、彼を殺害しやすいと報告書には書いてあるようだ。


 しかし、この報告を聞いた時俺は、そんな頭がいいはずの彼がこんな状況にも関わらずあんなことやこんなことをしていることに引っ掛かりを覚えた。


 何故なら、この状況にあったら普通の指揮官であってもなんとかこの兵士が流行り病で倒れ兵員が減少したとなればこれを解決させるために援軍を呼ぶなりしたはずだし、ずっとこの状況を放置するような愚策をとらないと思った、さらに言えばここまでの将軍になれば周辺の状況にも敏感にもなるだろうしここまでスパイを自由にさせないだろう。

 とは、思ったものの所詮は敵なのでこちらとしては好都合なのだが……。


 ここまで話が終わると同時にミーティングは終了した。

 終わるとすぐに、参加していた関係者すべてが今度は滑走路わきに特設したテントに向かい始めた。

 そしてこのミーティングと同時にほかの会議室では空海軍別々でパイロットたちのブリーフィングが行われているはずだ。


 これからいよいよ海軍と空軍航空機による模擬戦が始まる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る