169.模擬戦
海軍と空軍のパイロットたちは別々に他の会議室でブリーフィングを陸海空軍合同ミーティングとほぼ同時間に行われていた。
まず本模擬戦の参加部隊(機種)は以下の通り。
海軍
第一艦隊所属第一一戦闘攻撃飛行隊 F-14D 30機(8機追加配備)
第一二戦闘攻撃飛行隊 F/A-18F 30機
空母キティホーク搭載の戦闘機すべてが参加中、この間空母はほぼ浮かぶ箱状態、いまは護衛艦隊に守ってもらうしかない状態だが随伴するのはイージス艦巡洋艦と駆逐艦の両方でこれに加えて、艦載機が発艦した後に合流したアイオワ級戦艦の“アイオワ”と“ニュージャージー”の二隻もいるので心配ないだろう。
空軍
東部方面隊第一戦闘航空軍
第一航空団 F-15SE 24機(第101・102飛行隊)
第二航空団 F-22 24機(第201・202飛行隊)
第三航空団 F-2 24機 (第301・302飛行隊)
第三航空団として参加しているF-2戦闘機はアメリカ空軍の汎用小型戦闘機のF-16戦闘機をベースとして開発された日本の国産戦闘機で、そのつくりの良さから別名平成のゼロ戦とも呼ばれている。
主に対艦戦闘任務を想定していて、装備もそれに特化した強力な対艦ミサイルを装備し、機体の塗装が洋上に溶け込みやすい色合いとなっているのが特徴だ。
空軍側総参加機数72機
海軍側総参加機数60機
数的には空軍の方が勝っているが、海軍は一回とはいえ実戦経験があり且つ空軍と比べて訓練時間が多いのでので質でいえば海軍の方が優れているのでむしろそれは優位には働かないだろう。
ブリーフィングは、海軍側は東滑走路隣にあるハンガー内の待機所で、空軍側は北滑走路と南滑走路に挟まれた巨大防空シェルター内の会議室にて各々で行っていた。
模擬戦の概要は以下の通り。
1.まずは空軍機全機が一斉に北・南滑走路を使い離陸、上空で異機種大編隊を組む
2.全機が揃い次第、ウォーミングアップを兼ねて基地上空で編隊飛行や急降下・急上昇を繰り返し行う
3.空軍が離陸してからちょうど1時間後に海軍側の全機が離陸を開始
4.両軍全機が上空に上がったことが確認された後、セレンデンス基地より北に30㎞行った訓練空域に集結。
5.模擬戦開始
ルールはミサイルと機銃を一切使用禁止、ロックオンをして20秒たったら撃墜とみなす、その際にキルコール(撃墜許可申請)をすること。
一見簡単そうに見えるがロックオンをしたまま相手機の後ろに占有し続けるというのは至難の業だ。
俺とメリアたちは参加していた合同ミーティングが終わり、基地全体が見渡せる司令部ビル屋上に特設したテントに来ていた。
ここに来た後すぐに空軍側が動き始めていた。
目の前に見える広大な北・南滑走路(27L/09R・27R/09L)上にはすでにぎっしりと戦闘機が並び、滑走路に航空機の行列ができていた、その後一斉に滑走路をタキシングし始めたこのことをアメリカ空軍ではエレファント・ウォークというらしい。
エレファント・ウォークとは滑走路を航空機がタキシングしながら行進することで、有事の際の航空団が即応体制とるときや、保有する航空機の能力の誇示をする、一種のデモンストレーションのことだ。
両滑走路に参加する全航空機が並んだ光景は圧巻だ。
思わず俺は「おおっ」と声を漏らしてしまった。
並び終わりエンジンチェック他の確認が済んだ後、先頭に並んでいた機体から順番に次々と離陸を開始した。
ちょうど俺の真向かいの方向から轟音とともに飛んでくる姿は感動の一言だろう、この時に脳裏にはとあるアクション映画の主題歌が流れだしていた(わかる人はわかるよね?)。
飛び立っていった順に戦闘機は基地上空でウォーミングアップとおそらく俺たちや軍上層部に対するアピールもかねて急上昇や急旋回などアクロバット飛行を披露してくれた、中でも特に第2・4航空団所属のF-22は“コブラ”とよばれる、高度を変えずに機体姿勢を急激にピッチアップ(機首を上方に向けること)した後また水平姿勢に戻る空中機動のことで、これはF-22のように高度な失速機動特性を持つ機種にかぎられる。
その後南側上空で異機種大編隊を組むために集合していた、すべての機体が編隊を組み終わるときれいにダイアモンド型の編隊が組まれ、そのままの状態で俺らがいるビルの上空をフライパスしていった。
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