163.修羅場というよりもはやカオス

 

 演習終了後、味方機誤射事件が終結したのを見届けたワタとメリアは、セレンデンス空軍基地の司令部に戻った。

 そこには遅れてやってきたミスティア隊が集結していて、ミセア大佐はすぐに俺に近寄り遅れたことについて謝ってきた。


「到着が遅れ大変申し訳ございません、このミセア如何なる罰をも受ける所存であります」

「頭をあげてくれ、何も悪いことをしていないよミセア大佐、そもそもあの車の速さがイかれてたせいで早く着いちゃっただけだし、そもそも君らは当初予定してた時刻よりも早く来ていたんでしょ?なら謝ることもないし罰を受けることもない、逆の立場だったらあんまりにも理不尽だって思うし、気にしない!」

「慈悲深きお言葉痛み入ります、これからも我々ミスティア隊は忠誠を誓い、たとえ命を賭してでも御身をお守りいたします」

「ありがとう。さて、空軍の連中がバイキング形式の料理を用意してくれているようだから少し急ごうか、メリア行くぞ!」


 そういってミスティア隊達が無事に合流した事で護衛任務を再開され、同時に今まで護衛についてくれた空軍部隊と別れた。

 司令部内にある大きな食堂にバイキング形式でたくさんの料理を用意してくれているらしく、丁度おなかが減ってきた俺はその魅力に引き付けられるようにして足早に食堂へと向かうことにした。

 メリアは何故か皆が動き始めても俺を見たまま止まっていたので、彼女の手を取り強引に引っ張るように連れていくことにした。



 食堂につくとその部屋の中心に大きなテーブルが部屋を縦断するようにおかれ、そこにはテーブルを埋めつくすように様々な料理がたくさん並んでいた。

 すでに休憩に入っていたセレンデンス基地業務隊の隊員たちや一段落付いた空軍幹部に航空管制官たちが集まっていた。

 俺らが入ってきた瞬間、一斉に立ち敬礼をしてきたが俺は楽にするようにと手で合図を送った。

 俺達に用意されていたテーブルが一番奥にあるのを発見したので、早く食事を始めたい俺はメリアをまるで引きずるようにしながら足早にそこまで向かった。


「ワタ!そんなに急がなくても食事は逃げないわよ!」

「ご、ごめん、その、つい……メリアさん怒ってる?」

「いいえ、怒ってないわ、むしろ可愛らしいって思うわ!ウフフ」

「や、やだなぁ、恥ずかしいだろ!」

「なーに、照れちゃって!」


 俺達二人は周りの様子を気に留めずまるで夫婦のような会話を楽しんでいた。


「んんっ!陛下、お取込み中大変失礼ですが、ヴィアラ閣下一行とエレシア閣下一行がいらっしゃいましたので……ボソッ」

「ので?ん?最後になんて?…………ああ、そういうことね、すまん」

「(何よ!いいじゃない!)」

「ん?メリアなんか言った?」

「何でもないわ!気にしないで!」


 俺らののろけ話に割って入ってきたクレイシ―空軍大将は恐らく空気を読めということを言いたかったのだろう、ただ、俺には最後うらやましくなるからやめて~って聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう、うん。


 そんなことをしていると左右別々の方向から各軍の高官ご一行はぞろぞろと列をなしてやってきた。

 右側からは海軍大臣のヴィアラ、海軍総司令のリディア大将、作戦本部長のフラウ中将、ミサ中将、ミハイル少将が来ていて、対する陸軍からは大臣のエレシア、参謀総長のエレン大将、陸軍総司令のヨナ大将、さらに今度新設することが決まった陸軍航空総隊の司令のヴィンセント・ロレッタ中将が来ていた。

 最後に空軍大臣にして第三王女のエリカ、続いて空軍総司令官のルーメル・クレイシー大将、参謀総長のエレテス・セフィーロ大将、東部航空方面隊長のエレンシア・ベレーザ中将が来た


 ほとんどのメンバーの来る理由は分かっていたが、ただ一人明らかに違う目的で来ているヤツがいた。


「やぁ、ミサ、ところで今日は何のご用向きだい?」

「じゅる……はっ、陛下御機嫌麗しゅう、ところではやくカr、もとい今日は我が基地所属の航空隊が出ると聞いて……」

「って、んなわけあるかーー!本当はカレーが出るから来たんだろ貴様は!」

「(チッ、バレたか)」

「ハイ、そこ、小声で言わない!正直に言ってごらん?なんでミサちゃんはここに来てくれたのカナァ?」

「私はカレーを食べに来ました!!!」

「って言ってますがヴィアラさん?」

「申し訳ありません陛下、誰も止められなくて……」


 俺はいたずら半分で言ったのだが、当の本人は本気でそのためだけに来たらしく(というかそれ以外眼中になし)目をキラキラさせながらカレーがある方を見つめていた、もうここまで来ると笑えてくる。

 半面、冗談が通じていないヴィアラはというと俺がいることに加えエレシア達陸軍大幹部たちやクレイシ―達空軍幹部たちに見られていることも手伝ってか、恥ずかしさと申し訳なさからかものすごい低姿勢で謝る始末。

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