147.イリア銀行アルダート本社
俺はアルダート城に帰る前にイリアにお礼をしに行くために、普段勤務しているイリア銀行アルダート本社に向かっていた。
このイリア銀行は、イリア商会が運営と管理する銀行で、本部はアルダート城内にあり、支社を各主要都市であるハルベルト、ウルス、ハミルトン、キーレに置き、支所や出張所などを全国各地に置いている。
この会社は海外との為替もおこなっており、国の金貨などの流通管理責任や国家予算決定権も持ち、国内では主に商会への貸金業、証書発行、融資、預金受付。庶民に対しては貸金、預金、株の発行などを行う。そして商会長自体が財務大臣の職にあるため、実質この国の財政の命運をも握っている強大な権力を持った会社である。
このように政府から事実上独立しているわけだが、今日にいたるまで、一度も不正操作や不正取引などは行われておらず、むしろコンダート王国の経済成長の立役者になったぐらいである。
以前は、当たり前だが国の行政機関である財務省が銀行や予算を決めていたのだが、この会社が管理する前のコンダート王国は世界中の大不況の波にのまれ、徐々に崩壊しかけていた時があった。
さらにその当時、政治家や貴族などの特権階級の汚職や不正取引などで経済に悪影響を及ぼしていた。
それを打破すべく、当時財務大臣筆頭書記官であったイリアは、このままではいけないと思い、国の予算も含めたすべての財務を政府行政機関から分離させ、政治介入が完全にできないようにした。
当然これは、平民上がりのイリアが巨万の富を得るための欺瞞だとか何とかで猛反発を食らったが、当時の国王の鶴の一声もあり何とか設立までこぎつけた。
これが功を奏し、それまでマイナス10%の伸び率であったところをプラス5%まで回復させることができたのだ。
このおかげでコンダート王国は世界一経済的に豊かな国になり、ほかの国に比べて極めて貧しい人は皆無に等しいほどである。
そして、国内通貨として流通しているコンダートメルは、世界で一番信用性と価値が高いものとなっている。
そのためデスニアが侵略してきている真の目的は、このコンダート王国が持つ経済力を手中に収めることではないかとまでささやかれるほどだ。
そして、この商会を経営管理する凄腕の人物でありながら国の財政の要でもあるイリアであるが、彼女は前述したとおり生まれはごく普通の家に生まれていて、特に名のある学校に行ったわけでもないのだが、小さいころから数字にかかわることにはずば抜けて頭がよかったのでその才が認められ、当時の財務省は名のある学校に通ったものにしか任官が許されていなかったのだが、彼女だけは特別に許しを受け任官した。
当然、任官後は周りからひどいいじめを受けたが、それに負けず着実に功績をあげていき、エリートコースに乗ったとしてもたどり着くのに30年はかかるとされている筆頭書記官までにわずか2年で登りつめた。
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