103.大将VS大将


 ミサとエミリアは驚きと嫉妬にも近い怒りを覚えているようで、ベルたちに対して敵意むき出しでいる。

 しかし、ヴィアラだけは違い静かに俺がひそかに護身用として渡していたVP9を腰につけていた革製のホルスタから抜き出し片手で構え丁度近くにいたリレイに狙いを定めていた。

 それに対してリレイやベル以外の皆は素早くHK416をヴィアラに向け臨戦態勢をとっていた。


「ここは海軍の出る幕だ、貴様ら陸軍ごときが出る場ではないだろう?」


 今までの会話で俺が聞いていた声よりも2トーンぐらい低い声で彼女らに向かって怒りをあらわにしていた。


「そんなこと知らないな!こっちとしてはただワタ様をお守りするだけだし、これが我々にとっての使命なのだからな!」

「黙れ!そんなことなど我々にとっても同じことだろう?私はそんなことを言いたいのではない。海も知らない貴様らにいったい何ができるというんだと言っている」


「黙っていれば付け上がりあがって!こちとらお前らなんかより数倍の敵と肉薄してここまで冒険者として戦ってきたんだ!単純な能力ならこちらだってあるだぞ!そもそもおm……」


「そこまで!みんな落ち着け、こんなことしている暇があったらさっさと下に降りて敵将を捕まえてこい!ここにベルたちを引き連れて来たのは俺だから批判なら俺に対してしてくれ!それでどうだ?何か意見するものはいるか?」

「「「「し、失礼しました!!」」」」


 ここまで言ってようやく気が収まったのか変な瘴気のようなものも消え、皆が手に持っていたものを下に向けていた。


「とりあえず、陸軍組は敵艦内の抵抗分子の制圧のために先に出撃しろ、そのあとは好きに暴れまわってよし!次に、俺とヴィアラは敵将を捕縛しに行くぞ。何か質問は?文句があるやつはいるか?」


「「「「ありません!!」」」」

「よし!では行動開始!!」


 一時はどうなるかと内心冷や冷やしていた俺だが、俺が一喝することによってとりあえずは動いてくれたから良しとしておく。

 しかし、まさかヴィアラがあんな声でしかも銃も取り出してくるとは思っていなかったし、俺が思う以上に陸軍のことが嫌いだったのか、かなりの怒りの現れようだった。


 俺の一声によって、まずはベルたちが大和の甲板からロープを使って次々に飛び乗っていき、敵艦の制圧に向かっていった。

 その一番最後がベルだったのだが、案の定俺がヴィアラと行くのが気に入らないらしく、最後までヴィアラに向かってブツブツと何かを言いながら背中から降りて行った……。


「よし!じゃあヴィアラ行こうか?」

「は、ひゃい!喜んで!」

「どうした?」

「な、何でもないです!行きましょう!」


(か、かわいい!クールビューティーなヴィアラがそんな反応してくるのはタマラン!)



  敵艦に降りるとすでに床にはおびただしい量の血が飛び散り、その周辺には今しがた息が絶えたような死体があちらこちらに転がっていて、少し遠くの方ではベルたちが銃やら剣やらで戦っている音がする。

  そんな場所を俺は少しの吐き気を覚えながらゆっくりと進んでいったが、対するヴィアラはそんなことを臆することなくずかずかと進んでいっていた。

  不意に生きていた敵がヴィアラに向かって剣を持って突っ込んでいったが、その敵の方向を見ずに手慣れた手つきでVP9を引き抜き、一発で仕留めていた。そんなヴィアラに見とれて後ろから来ていた敵に気づかず振り向いた時にはすでに肉薄され剣が俺の頭に接近していたが、ヴィアラがきれいにヘッドショットを決めてくれたおかげで難を逃れた。


「陛下!お怪我は?」

「だ、大丈夫だ。もうそれを使うコツを覚えたのか?おかげで助かったよ」

「そ、そ、そんなことないですよ!たまたまですたまたま、アハハハッ!」


「そうか?それにしてもすごく鮮やかな立ち振る舞いだったぞ!」

「(そんな笑顔で言われたら……ボソボソ)」

「ん?なにかいっt……」


「おい!貴様らか!我々の艦隊をこんな目に合わせたのは!」


 そんな少し和やかな会話をしていた二人のもとに、突如として赤く煌びやかな軍服に身を包んだ男が現れた。


「何者だ貴様は!」

「こちらに乗り込んできた貴様らが名乗るべきだろう?まぁよい、俺は崇高なるデスニア帝国海軍第三艦隊最高指揮官であるオイレンベルガ・ジークフリートだ!」


「貴様があの!……私はコンダート王国海軍大臣ガンダルシア・ヴィアラだ!お前らはすでに白旗を上げ降伏したはずだがまだ抵抗する気か!」

「黙れ!あと少しで帝国海軍の完全勝利であったのに、ここで引き下がれるわけがないだろう!」


 確かに俺がもし逆の立場で同じ状況であったら彼と同じ気持ちになっていたかもしれない。しかし、彼には俺にない“帝国軍人のプライド”というものが今の彼を突き動かしているのであろう。


「ならば潔く一騎打ちと行こうか、それならば貴様の気も少しは晴れるだろう。どうだ?やってみないか?」


「いいだろう受けて立つ!」

「やめろ!」


 二人は俺の静止を聞かず、剣を抜き放ち走り出していった――。



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