102.殲滅戦

 

 一方的に攻撃し帝国に対する海戦の中で初の勝利を得た王国艦隊は、降伏した敵艦隊司令官が生き残っている可能性があると判断し敵艦隊の真横に船を近づけていた。

 敵艦の真横に来ると意外にも大きく80mぐらいはあり横幅は15mぐらいだろう。


 しかし、目と鼻の先にまで接近した途端、敵は急に砲撃を開始し、さらには甲板から矢や槍、ナイフなどのありとあらゆるものが飛んできていた。


 ドゴン!


 至近距離で放たれた砲弾が直撃したことによって船体に衝撃が走る。


「何事だ!」

「敵の攻撃です」

「状況知らせ!」


 今まで優位にことを進めてきただけあって油断していた王国側は、大いに慌てていた。

 しかも敵の攻撃が予想以上に激しいので、もはやこれまでと思うものや、遠くからの攻撃にとどめておけばよかったなどと言う者もいた。

 敵側からしてはこれまでやられていった仲間たちの仇をとる意味と、最後の抵抗の意味があるので、それこそ必死の思いであろう。

 しかしこんな状況にもかかわらず俺は、冷静に判断し慌てている皆に対して即座に指示を出していた。


「落ち着け!うろたえるな!この艦はそう簡単に沈まないから安心しろ!まずは各部状況を知らせろ、それから手の空いているものは甲板に集合、万が一に備えて用意していた銃を装備して攻撃を開始しろ!」


「「「「了解!」」」」

「武蔵にも打電しろ!」


 こんなこともあろうかと用意していた銃(HK416)を秘密裏に練習させていた兵に持たせ、撃たせることにした。

 ただここで砲撃を行えば良いのではないかと艦長からの意見が出ていたが、俺はそれを即座に否定した。

 第一近すぎて(隣の艦との距離10m)仮に46㎝砲の凄まじい衝撃波によって敵は木っ端みじんになる、しかもそれは砲撃の直撃ではなく発砲時だけでだ。接近しすぎているので乾舷(水面から甲板までの距離のこと)が大きいので今は敵艦自体を見下ろす形になっているので甲板より下方に俯角をとれない以上、命中させて効果的な射撃をするのがそもそも不可能なのだ。


 そもそも大和型の船体は鋼鉄によってできていて、尚且つ装甲も非常に厚くなっているので、敵の使う前装式の丸い鉄球のような砲弾を使った砲撃は効きにくい、それでも同じ位置にたくさん撃ちこまれればまた違うのだろうが。


 少し経つと先ほどの号令によって行動していた射撃班が散発的に攻撃を始めていた。

 ただそれほど数を用意していなかったので、敵を一瞬怯ませたが効果はいま一つのようだった。

 それを見た俺はいてもたってもいられなくなり、LiSMからM249paraを召喚し艦橋横の階段から射撃をしようとしていた。

 そんな俺の行動を流石に危険だと判断した周辺の兵やヴィアラ達に止められた。


「陛下おやめください!危険です!陛下無しではこの国がまた窮地に立たされてしまいます!どうかお考え直しを!」

「……わかった」


 ヴィアラの必死に止めてくるのを見て俺は一旦あきらめることにした(ホントは揺れる胸を見て動揺したなんて言えない)。


(必死に訴えてくる女の子サイコーです!)


 しばらくたつと敵はこちらに砲撃が効かないことに気づいたのか、ぴたりと砲撃をやめた。


「報告!本艦の被害、左舷に多数直撃弾あるも艦内異常なし!武蔵は被害皆無の模様」

「陛下いかがなさいますか?」

「臨時に決死隊を編成して敵艦に乗り込んで敵将の捕縛をするしかないな、そこに俺も志願する」


「無茶苦茶を言わないでください!ここで死なれては我々の帰る意味も場所も失います!せめてこのヴィアラを連れて行ってください!」

「俺はいく、これは命令だ!」


 普通に考えて指揮官が、ましてや王が直接敵陣に乗り込むなど異常なことである。

 しかし、俺は考え無しにこれをしようとしているわけではなくある秘策を実行しようとしていたからだ。


「ただ、一人で行くとは言っていない、俺には秘策があるんでな……。聞こえているんだろ?ベル、シルヴィア、エレザ、ミレイユ、キューレ、ユリーシャそしてリレイ達」


 俺のその一言の後艦橋にぞろぞろと“秘策”達が集まってきた。


「陛下、皆準備万端です!いつでもどうぞ!」

「ワタ!待ちくたびれたぞ!」

「ワタ様!ソコノ、女、ハ、ダアレ?」

「シルヴィアは例えどんなところであっても御身のそばに」


 実は船自体に移乗攻撃を敵が仕掛けてくる想定もしていて、同時に敵艦への移乗攻撃も可能なようにしておくためにベルたちを水兵に変装させ待機させていた。

 夜、身辺警護を担当していたのも実はベル達だったりする。


(ヴィアラと二人きりで会談しているときにドアの外から謎の瘴気が漏れていたなんて言えない)


 ここに来た時にはすでにボディーアーマーをつけていて、ベルだけはLeupold社製の2-12×42㎜のスコープをつけ狙撃仕様にカスタマイズされたSIG716を装備し、それ以外のみんなの手にはHK416が装備されていた、そして腰には皆SIGP226が当然のように装備されていた。

 何故かは知らないが約一名何か呪詛のようなものをつぶやきながら瘴気のようなものを周りにまき散らしていた。


「えっと、ベルさんまずは落ち着こうか?」

「(コ・ろす?)……ハッ!失礼しました、つい近くに居た泥棒猫がキニナッテ、フフフフフフッ……ギャ!」


 制御が効かないと判断したのかミレイユは、ベルの後頭部を銃床で思い切りぶつけ気絶させていた。


「な、何なんですかこの人たちは!?」

「艦長!こいつらを今すぐ営倉にぶち込んでしまえ!」

「ですがミサ司令、陛下のお知り合いのようですが?」

「そうか……、陛下!彼女らはいったい何者なんですか?」

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