101.奇襲


「報告!敵艦がものすごい速度でこちらに接近中!」

「何だと?!本気か?」

「はッ!間違いなくこちらに考えられない速度で向かってきています!」


 その報告を聞いたジークフリートは完全にパニックを起こしていた、それもそのはずで帝国海軍が保有する軍艦はすべて風を帆によって受け止めその力で航行する帆船なので、スピードを出せたとしても頑張って10ノットが限度で普段はそれ以下の3ノットぐらいだ、それを今接近してきている二隻の船はそれを軽く超える速さで向かってきていたので、今までの常識を逸したことに考えが追い付いていない状況だ。


「とりあえず艦隊を集結させてこの船を囲むようにしろ!万が一に備えて砲撃用意もしておけ!」


 こんな状況でもここまでの経験が生きてくるのか、最低限の指示をすぐに飛ばしていた。

 その直後艦隊を取り囲む外側の船の周辺に巨大な水柱が何本も上がっていた。


「何が起きている!?」

「わかりません!いったい何がッ……」


その水柱が上がってから間を置かずにすぐにまた”それ”が飛んできた。

ズガンッッッ!!


 その音とともに艦隊外縁部の船数隻が吹き飛んでいった。


「閣下!これは敵からの攻撃に違いありません!」

「そんなことあるか!ここから相当な距離があるぞ!」


 この攻撃を受け完全に浮足立った帝国海軍は大した対抗策もとれなかった。

 しかも距離的に艦隊の全船に装備している大砲の射程外でもあるので反撃もかなわなかった。

 そんなことを考えているうちに周りの船は次々に爆発や粉砕されながら沈み、船が密集していたところでは火薬庫などに引火して大規模な火災も起きていた。


 この状況にもかかわらずただ傍観することしかできないジークフリートだったが、何とかこの窮地を脱してこの情報を持ち帰るべく撤退命令を出していた。


 それを受けた残存艦は徐々に右に舵を切り始めていた。

 ただ速度があまり出ない上に密集してしまっているので身動きがとりにくいのでなかなかそれもうまくいかなかった。


 そうやってまごついているうちに120隻もあった残存艦は、瞬く間に20隻にまで減らしていた。

 20隻まで減ったところでようやく敵の攻撃もやみ、船が少なったこともあって撤退にようやく移ることができた。


「閣下この後はいかがなさいますか?」

「こんな一方的な敗退は初めてだな、致し方ないがこのまま帝国に帰り敵は隠し玉を持っていたと報告せねばならん、すぐに帰投する」

「御意」


 その砲撃がやんだのはほんの束の間で、またしても急接近してきた王国海軍の船は攻撃を仕掛けてきた。


 ジークフリートがここで驚いたのは船の中央部に出ていた煙は火災が原因の煙ではなく煙突のようなものから立ち上るものであった、しかも敵艦をよく見るとそのほとんどを金属で作られているのか全体的に灰色に見えた、そして極め付きは艦の前方と後方にはとてつもなく大きな砲門がついていたことであった。


 その恐ろしくでかい大砲によってこちらが攻撃されていたのを知ったジークフリートは愕然とし、戦意を完全に喪失していた。


 敵艦からは先ほどより激しい砲撃を受け、最終的には艦隊旗艦を含めた3隻のみとなってしまっていた。

 完全な敗北と逃走も不可能と悟ったジークフリートは軍艦旗を降ろさせ降伏を宣言した。


 降伏の意を理解した敵艦は砲撃をやめ、こちらにまた接近をしてきた。




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