104.死闘
剣を抜き放ちお互いに向かって走りだしたヴィアラとジークフリートの両者は、次の瞬間には激しく剣がぶつかり合う音とともに何度何度も斬り結んでいた。
実力の部分ではお互い拮抗しているためか一度も傷を負わせるような一撃がないが、力の面では残念ながらジークフリートの方が勝っており、ヴィアラは徐々に後ろに押され始めている。
ジークフリートはバスタードソードを片手で軽々と振るっているが、対するヴィアラはサーベルを本来片手でも扱えるはずなのだが片手ではジークフリートの重い一撃を受けきれないので、両手で構え対抗していた。
剣術に相当な自身があったヴィアラであってもジークフリートでは分が悪かったらしく、ついにはヴィアラのサーベルは叩きおられ、その勢いのままヴィアラは尻餅をついてしまっていた。
好機とみたジークフリートは、へたりこんでいるヴィアラに近づき剣の切先を喉元に突きつけていた。
「剣も折れたしどうやらここまでのようだな。ヴィアラとかいったな?丁度いいから貴様にはここで死んでもらおうか……ハハハ!いいぞその目!最後に何か言いたいことはあ――ウガッ!!」
バンッ!
何も抵抗できないとみて余裕そうに剣を突きつけていたジークフリートであったが、ヴィアラが少しだけ動いたかと思った瞬間、彼は破裂音が聞こえた後すぐに右肩に激痛を堪える表情のまま固まっていた。
ヴィアラはVP9を片手で構え、その方向をジークフリートにまっすぐ向けていた。
「勝ったと思ったのか?残念だったな!剣は折れてもこの陛下より賜りしこの“銃”が私には残っていたんでな!」
先ほどまで余裕を見せていたはずのジークフリートは今や、驚愕、怒り、痛みによって顔が歪ませながら立ち尽くしていた。
彼にとっては今までの一方的に攻撃され殲滅した自分の艦隊の雪辱をここで敵の指揮官たる“彼女”を討つことで晴らすつもりだった。そしてその目論見はいま見事に潰えた。
「もはや貴様らは負けも同然だろう、即刻降伏しろ!」
「うるさい!うるさい!栄光の帝国軍人である俺が負けるなど有り得んのだ!“銃”とか言ったな?それを持っているのはお前たちだけじゃない!」
「ヴィアラ!よけろ!」
バンッ!!
次の瞬間、ジークフリートは懐から木でできた短い筒を取り出しヴィアラに向け“発砲”していた。
ジークフリートがヴィアラに撃たれた後、左手が妙な動きをしていたのに俺は気付いていたのでもしや?と思い警戒していたら案の定だった。そして彼が動きを見せたので俺は咄嗟に走りだし、ヴィアラをかばうように飛び付いていた。
「ヴィアラ!大丈夫か!?ウッッ!」
「ワタ様ーーーーッ!!」
俺はヴィアラを庇うときに背中に被弾してしまい、そのままうつ伏せに倒れた。
撃たれたその部分にも心臓があるかのようにどくどくと激しく脈打ち、あたりには血が川のように流れ始める。
「ハハハ!こりゃあいい!!そいつがその“陛下”か?ここでお前ら二人ともやってしまえば軍艦200隻が消えたとしてもおつりがくるぐらいだな!」
「貴様よくも!」
「おっと!こりゃあまたいい目をしてるな!いっそ俺の物にならないか?」
「誰が貴様なんかと!まだこっちだって!」
カチッ!カチッ!
ヴィアラにとって最後の希望だった俺が渡したVP9は、弾を撃ち尽くしたせいでホールドオープンしていた。
それもそのはずでさっきの戦闘で何発か撃っていたし、もともと護身用と思って渡していたのでマガジンの中のバネが緩まないように10発しか込めていなかったからだ。
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