50.夜襲
帝国軍は城に接近し始めると、かねてから訓練してきた作戦を実行に移した。
「魔術化部隊各員につぐ、直ちに部隊前方に対衝撃シールドを展開せよ!」
部隊長に促され、魔術化兵たちは戸惑うことなく完璧なシールドを展開した。
(よしこれでいける!我らの帝国魔術化兵ならきっと敵の攻撃をしのいでくれるに違いない)
リレイはそんなことを思いながら、自信に満ち溢れた表情で戦線を見守る。
まもなく敵の城が視界内に入ってくる――――
暗視装置付きの双眼鏡越しに敵の動向を窺っていた俺は、有効射程圏内(両方の銃の射程圏が重なる位置)に到達したことを確認したので、下の班にとある作戦を実行してもらうことにした。
「こちら迫撃砲班ノア、射撃準備完了」
「了解、弾種照明、撃ち方用意」
「了解!」
「良し、来たぞ!全砲斉射 撃ち方はじめ!」
ボン!ボン!ボン!
下の方から断続的に射撃音が続く。
「撃ち方やめ!」
「40発発射完了!」
「了解、次の指示があるまで待て」
「了解!」
しばらくすると上空に到達した40発の照明弾が時限信管の作動により次々と発光していく。
昼間のように明るくなったおかげで敵の位置から配置までまるわかりである、敵は急にまぶしくなったためその場でたたらを踏み、ゆっくりとした行軍もぴたりと止まった。
「続いて弾種榴弾、基準砲、試射はじめ!」
「了解!試射はじめ……撃てッ!」
「弾ちゃーく……今!」
ボン!と一発敵の左中央に着弾し爆炎が見える。
「右前方に修正射、基準砲撃て」
「了解!修正射……撃てッ!」
「弾ちゃーく……今!」
今度は敵の隊列の一番前の列に着弾した。
「目標前方に着弾!効力射はじめ!全砲門斉射!」
「了解!全砲門斉射はじめ!撃てッ!」
最初の二発ではびくともせずとどまっていたが、無数の砲弾が向かってくると隊列を乱しバラバラにこちらに突撃し始めた。
すでに照明弾の明かりが消えてしまっているので、再び照明弾を撃ちあげてもらう。
「迫撃砲班、弾種変更、照明弾、明かりが薄くなり次第射撃せよ!」
「迫撃砲班了解……撃てッ!」
再度明かりがともされた機会にガトリング班も射撃を開始。
「ガトリング班射撃開始!てッ!」
「「「「了解!」」」」
ヴォォォォォオォォォォオォォ!
12.7㎜と7.62㎜の無数の鉄の矢が敵に向かって撃ち出される。
目の前ではこの“鉄の暴風”の中勇猛果敢に突撃してくる連中がいたがさすがに弾量が多くすぐに血の海へと消えていく。
盾を前に前進してくる集団もあったが薄い鉄板であったら易々と貫通する7.62㎜の弾では紙以下でしかない、その弾で済めばよいが、それより大きな12.7㎜も使用しているので、恐らくそのすさまじい威力によって単発であればまだ穴が開くか千切れ飛ぶぐらいだろうが、無数の弾が飛び交うこの場では人間はもはや形すら残らないだろう。
しばらく射撃を続けていると、前線にいた敵兵は文字通り“消え失せていた”
「総員射撃中止!迫撃砲班は撤収せよ!」
号令をかけた後敵の方向を双眼鏡で確認すると奥に少数であるが残存する兵が残っていた。
広場に集まるとそこではもうすでに勝利を喜び、酒を飲み始める連中がいた、まだ敵が完全に撤退したわけではなさそうだが、兵たちはそんな束の間を過ごしていた。
俺が下に行くとすでにローレンスやノア達も集合していた。
「陛下、この度の勝利おめでとうございます!これで今夜はゆっくり寝れそうです」
ローレンスは今まで以上に明るい表情で話しかけてきた、きっと本人は今までの重責がストレスとしてあったのだろうが、今回の戦闘で少しは楽になったのだろう。
「いやローレンスさん、これはみんなの力によって成し得たことです。ご苦労様です」
そういって俺は腰を折って礼をする。
「いえ陛下、これは陛下の兵器のおかげでもありましょう、本当に感謝しています」
ノアも嬉しそうに返してくる。
「ただ、それでも今は追い返しただけで、この後の殲滅戦が重要」
ミレイユは珍しく少し上気した顔でそう言ってきた。
「そうだな、この後も引き続き警戒を怠らないように親衛隊長は関係各所に伝達をお願いできますかな?」
「ハッ、直ちに!」
ローレンスが伝達に行ったのを見送った後、俺はある作戦についてキューレ達を呼び話し合いを始めた。
そのあと、俺らもこのままでは体が持たないので町の広場の一角にある防衛隊のテントの一部を借りて仮眠をとることにした。
そのまま何事もなくテントで一夜を明かした――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます