49.闇夜に紛れて
デスニア帝国軍先遣部隊指揮所
夜の出撃に向け慌ただしく準備を始める歩兵や騎兵部隊を横目に、魔術化部隊と呼ばれる魔法に特化した歩兵部隊はとある訓練をしていた。
コンダート王国軍にも帝国軍にも魔法化部隊は存在しているのだが、帝国には遊牧民が多く、都市に住む人が少ないため魔法を教育されている兵が少ないので帝国軍内部では希少価値の高いものである。
しかし、量が多い王国に比べ帝国の場合そういった特色から魔法教育に力を入れているので質がいい、そのため戦場に出ることは少ないものの重要な局面で帝国軍の勝利を支えている影の立役者でもある。
今回、重要な役割を任された千人余りの魔法化部隊の兵たちは訓練に励む、その訓練を指揮しているのはリレイの副官のユリーシャだ。
ユリーシャ自身大事な役割を任されているためか、会議の時の大人しそうな印象が、今では嘘のように激しく怒鳴ったり、大声で指示を飛ばしていたり、ものすごく真剣に訓練を施している。
「いいか貴様ら!この一戦は帝国にとって大事な一戦だ!とても難易度は高い作戦だとは思うがこの作戦が成功すれば今の階級から一気に上へと上がれるだろう!」
ユリーシャの励ましの言葉によって兵たちは歓声をあげ、きつい訓練で少し疲弊していたがその言葉によって元気付けられたのかさらなる訓練をこなしていく。
夜になり兵士たちは戦闘を前に食事を済ませ、すぐに野営地を片付け行軍を始める。
それに続いて前回出撃しなかったリレイを含める将校達も馬に乗って兵と共に行軍を始める。
行軍中、リレイに寄り添うようにしてユリーシャは今回の作戦内容を確認する。
「リレイ閣下、今回私が率いる魔法化部隊ですが“例”のものができるようにしておきました」
「よくやったユリーシャ、この作戦は君が要だ、しっかりと頼むぞ」
「ハッ!御身のままに」
夜になったハミルトン城で兵たちは交代で歩哨につき、残りの兵たちは夕食をとっていた。
俺たちもこの時間の間に腹ごしらえをすることにした、サクラとミント、エレシア達は町の食堂でご飯を食べているらしいが、俺は食欲がないためLiSMで栄養補給食と翼を授けると謳い文句のドリンクを召喚して、兵たちのテント近くで口に入れていた。
シルヴィアとキューレ、エレザ姉妹は当初は食堂に一緒に行くことになっていたが、俺が食欲がないことを理由に行かないと言って残ると、彼女らも残ると言い出した。
どうやらシルヴィアとキューレはノアのことがまだ許せないらしく近づきたくないようだ、ただエレザとミレイユの二人は単に兵器の手入れをしたいとのことだった(それを聞いてちょっと残念)。
「ワタ……様、この戦いが終わったらメリア女王と一緒になるんですよね?そうしたら私たちは邪魔者ですか?」
キューレは唐突にそんなことを言い出した、どうやらずっとそのことが気になっていたらしく、少し前まで静かにしていたようだ。
「何を急に言い出すんだ、君たちと別れることは今後一切ないよ。第一、一緒についてきてくれるんだろう?」
「ううっ!あ、ありがとうございます!一生ついて行きます」
ほっとしたのか、キューレは安心した顔になってほろほろと涙を流す。
「そ、そんなこと言うなら、わ、私だって、一生下僕としてついてまいります!」
キューレの言葉に同調してか、シルヴィアは顔を俯かせながら言ってくる
「そんな生ぬるいやつじゃなくて、君たちは……俺の――」
「敵襲!!全員戦闘配置に付け!」
敵が来たため、静かに夕食をとっていた兵たちも即座に武器を取り各部署へと戻っていく。
キューレやシルヴィアは俺の言葉を待っていたようだが、すぐに真剣な表情になり、召喚して供与してからずっと愛用してくれているSIG716にマガジンを込め、チャージングハンドルを引き初弾装填までを淀みなく行っていった、同時にエレザとミレイユもHK416を同じように撃てるようにする。
すぐにガトリング班は銃座が設置してある城壁の上に走っていき、迫撃砲射撃班はあらかじめ距離、方向を決めて設営しておいた射撃陣地へと走る、当初は城壁内からの射撃を予定していたが、見通しも利かず城壁への誤射の可能性もあるため門の手前の平らな場所を選んだ、迫撃砲は40門設置した。
今回俺はガトリング班と一緒になってGAU-19で射撃に参加する、下の班とは事前に渡してあった無線機で連絡を取ることにしてある、使い方は講習と同時に教えてある。
城壁の上から暗視装置付きの双眼鏡を使って、敵の向かってきた方向を観察する。
敵は縦隊で進んできていた、こちらが気付いていないと思ってか、身をかがめもせず、足音も普通に聞こえてくる。
俺は身に着けていたインカムで下の班に指示を出す。
「迫撃砲は合図あるまでそのまま!」
「「「了解!」」」
「ガトリング班は俺の射撃と同時に射撃開始!」
「「「「了解!」」」」
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