20.ベル達と共にエルベ村

 そんなこんなでベルを含む4人でエルベ村に向かうことにした。


 ベルにこの国の情勢について聞いてみると、いまはこの国の大半と接しているデスニア帝国と戦争中であるらしく、陸海から包囲されている状態で、国境地帯で小さな小競り合いやにらみ合いが続いているようだ。


 ただ、コンダート王国は戦時中にも関わらず、食料などはもともと大幅に余剰が出て輸出をしていた程食料自給率が高く、各都市に食料貯蔵も多くあるので国民が飢えることもなく、軍は国家危機を事前に察知し前々から徴兵令を出し動員しているので、急な徴兵で働き手がいなくならないようにしている。

 そのため経済が急に不安定にならず、戦費が足らなくなったとかで急に税を高くしたりもせず、国内の表だった混乱は特にはないようではある。


 また、残念なことに先の会戦で戦場に総司令官として出向いていた先代国王と王妃を失ってしまったため、

 今のこの国のトップには王妃と先代国王との間に生まれた第一王女が女王としてなった。


 その女王は名前をコンダート・メリアといい、メリアは幼少期から剣術や魔術などの訓練を受けており今ではその師匠さえも凌駕するほどで、普段はおっとりとしていて大人しそうだが、戦場では先代国王のように前線の兵士と共に敵陣に突撃し敵将軍を討ちとってくるような人であるようで、巷では“戦(せん)姫(ひめ)”と呼ばれるぐらいらしい。


 政治に関してはあまり得意な方ではないようだが、この世界の主要な言語を理解したり、伝説や神話などを暗記するほどの、暗記力や頭の良さがあるらしい、まさに文武両道である。


 そんな話をしているうちに、村の全体が一望できる丘までやってきた。


「あの、真中に見える集落がエルベ村です、古くから旅人の休息地として栄えてきました。」


 何も知らない俺に丁寧にこの村のことをベルは説明してくれた、なんでもこの村は多数の街道が交わる要所で意外と人通りが多いらしい、ただすぐ近くに魔物の棲む森がありそこから時たま魔物が襲って来ている、農地拡張しようにも魔物の森を伐採しなければならないが危険が伴うため、今でも十分に小さな村よりは大きいが町のように大きな都市には発展できずにいる。

 それに加えてセレデア周辺でもモンスターが大量発生したのと同時期にここエルベ周辺でもモンスターが大量発生していた。


「ここにて、一泊し次の朝にはモンスターがいる森へと出発することにしましょうか」

「そうだな、もうそろそろ日が傾いてくる時間だしな」


 二人が村に着く前には日もだいぶ傾き夜に近付こうとしていた、村の方からも日暮れを知らせるものなのか、鐘が聞こえてくる。


 村の門に近付いて行くとベルがとある異変に気づく、その異変というのも、いつもは鐘が鳴った後は村の中心の酒場で冒険者たちが集まって夕食会を行っているみたいなのだが、主役であるはずの冒険者の姿すら見えず、そうかと思えば村人ですら出歩いていない。

 さらには村の門に見張りもいない…


「やけに静かだな、嫌な予感しかしないな」

「本当はいつもだと夜でもにぎやかなのですが…、怖いぐらいに静かです」

「とりあえず、村長に話を聞いてみるか?」

「そういたしましょう、丁度挨拶をしようとも思っていたので」

「我々二人はこの村のギルドメンバーにあってくる」


 美人姉妹は先に村の中にいるであろうギルドメンバーと連絡するため入っていった、残りの二人の中で結論が出たところで。二人は先ほど姉妹が進んでいった門をくぐっていった。


 村の中心を通るメインストリートを進んでいくと、途中途中に木柵や土嚢などでバリケードが作られていた。


 そういったものが気になりつつも、村の奥にある村長の屋敷へと向かう…


「そこの者、とまれ!」


 屋敷を警護していた兵士が持っていた槍をこちらに向け制止する、さらに後ろの兵士たちも抜刀し構える。

 こちらにもかなりピリピリした空気が伝わってくるほどの状態で厳戒態勢を取っている、しかも全員女性であった。


「我々は怪しいものではない!我は王国近衛騎士団第一連隊長のへカート・ベルである!矛を収めよ!」


 下手をすると襲ってきそうな勢いだったのでベルは自分らの正体を知らせた


「ハッ、ベル殿でありましたか!それは失礼いたしました、無礼をお許しください!」


 身分を聞くや剣を収め、体を90度に曲げてまで謝罪する女性兵士達。

 “近衛”と聞いて助けに来てくれたと思ったのか、少しばかり安心したような様子だ。


「村長にごあいさつに来た、ここを通るぞ!」

「ハッ、どうぞお通りください」


(俺は、この後どうなるんだろう?)

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