18.帰還
ステラのさっきの行動が気になりながらも理由を聞けないままセレデアまで帰ってきていた。
転移する前にしたことのなかったキスとハグをされて完全にパニックになった俺だが、こういう体験は今までなかったのでどうすればいいのかもわからずただただ呆然とするだけだった。
ただ心臓の鼓動が高まっていくのだけはわかっていた。
どぎまぎしたまま二人は町につき、すぐにギルドの集会所へと向かった。
ギルドに着くと、そこにはもうすでに多くの人が集まってきていた、ただ朝集まった人数よりも明らかに少ないようだ。
周りを見てもほとんどの人がけがをしていたりひどい人となると床に寝かされ治療を受けていた。
ほかの多くがその状態なのに対してエレザの率いている隊は軽い傷を負っているものは少しばかりいたがほぼ無傷で帰ってきていた。
とりあえず俺とステラは、戦った時に大量の返り血を浴び、さらに自分たちも小さな切り傷を負っていて全身血だらけになってベトベトなので、ギルドの裏にある井戸で軽く落とすことにした。
俺は井戸から水をくみ上げると、真っ先に一番気になっていた顔の血を流し、腕についていた血も丁寧に流しとっていった。
何とか血を流すが、体に染みついた血の匂いは取れないままだ。
ステラも俺と同じように顔や腕についた血を流し、さらに剣や防具についていた血も井戸に置いてあったぼろ布を水で濡らしで拭っていた。
そんな俺たちに気づき近づいてきたエレザは、驚きと不思議そうな顔をしていた。
それもそのはずで、俺とステラ以外は皆6人以上のパーティーを組んでいてなおかつ重武装でいるのに対して、ステラが剣一本と俺はこの世界の人からしたら得体の知らない黒い物体を持っただけの軽武装だからだ。
こちらの世界の人たちからしたら、モンスターが大量に発生しているところに軽武装でしかも二人のパーティーで行くなど、相当な実力のある人でなければ自殺行為に等しい。
しかし、俺には銃があるため同じものを持っていない相手で中距離であれば一方的に攻撃できる上に弾さえあれば多数の相手を一人で倒すことができる。さらに拳銃であれば至近距離の相手にも素早く対処できるし、一人であっても手りゅう弾や各種爆薬を使えばさらに大多数の相手を一挙に葬ることも出来る。
それを知らないエレザ達にとって中級冒険者や熟練の冒険者たちが束になって掛かってようやく帰ってこれたというのにほぼ無傷で戻ってきたとなれば異常でしかない。
「一体全体ワタ達はどうやったらほぼ無傷でしかも短時間で帰ってこれるんだい?こっちは750体以上のモンスターを50人でギリギリ倒せて帰ってきたというのに、しかもあの森にはもっと大量のモンスターが潜んでいただろう?」
どうしても俺たちが無傷で帰ってきたのが不思議でしょうがないエレザに質問攻めにあった俺は、さも当然のようにそして平然と答えた。
「森に入ってすぐに10体ぐらいのゴブリンの集団に遭遇して戦闘を開始したらすぐにゴブリンの本隊が増援に現れて乱戦状態に、そこから約1時間後には襲ってきたゴブリン“殲滅”とまぁこんな感じだ、倒したゴブリンを目視で確認したところ200体以上はいたと思う……」
「嘘だろ!?たった二人で200以上も!そんなのあり得るわけが……」
俺の報告を聞いたエレザは腕を組み片手を顎に当てながら唸ってしまう。
どうやら相当理解できないでいるようだ。
(まぁ、そんなに考えたところでも結果は変わらないけどね)
血だらけだった全身をあらかた綺麗にしたステラと俺は、すっきりとした顔でエレザとともにギルドの中に入ることにした。
ギルドの中に入ると、今までこの周辺では負傷者のうめき声や冒険者たちの会話だけが聞こえていただけで比較的静かだったのが、急に外の方向から恐らく馬の歩く音や鎧などであろうか金属がぶつかり合う音などが多数聞こえはじめ騒がしくなってきた。
それを聞いたエレザはまるで“考える人”のようになっていたが、静かに顔を上げ、手を剣の柄に置き自然と警戒するような恰好に移っていた。
しばらくしてその一行がギルド前に止まったのか先ほどまで聞こえていた音が急になくなった、周りもエレザの警戒するような姿を見て皆緊張した面持ちでギルドの入り口の方向を見つめていた。
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