12.クエストからの帰還

 彼女とともにセレデアの門についたとき、俺が美少女を背負って息も絶え絶えな状態を見て門番が一瞬怪訝そうな顔をしてきたがカードを見せると何事もなく通ることができた。


 しかし門をくぐって気づいたのが、以前入ってきた南門とは反対の北門に入ってしまっていた。

 南門から入ればすぐ目の前にギルドの建物が見えてくるのだが、今やセレデアの商店街のど真ん中に来てしまっていた。


 ただそこに立ち尽くしているわけにもいかないので、ここを抜けて反対側にあるギルドのある場所に向かうことにした。


 ギルドに向かう途中、何度か通行人が変なものを見るような目で見てきたが、疲れ切っている上に背中に人を背負っている状態で恥ずかしいからと言って走り出すわけにもいかず、俺にはそのほかどうすることもできずそのまま重い足をギルドへと向け続けた。

 やっと着いたと思い入口を見ると心配そうな顔つきでエレザとミレイユが待っていた。


 「簡単なクエストに行ったっきり戻ってこないってリズが心配してたぞ、それを聞いてこっちはいろいろと探し回ったんだぞ、しかも周辺で魔物が大量発生したらしいからてっきりどこかで力尽きたかと思ったじゃないか……それはいいとして今度は帰ってきたと思ったら誰だその子は?」


 よっぽど心配してくれていたのか町にいたエレザの配下が町周辺を探し回っていてくれていたらしく、ギルド周辺には多くの女性たちが集まっていた。

 事態を重く受け取った俺はすぐに背負っていた子を近くに下ろし、エレザたちに向かって頭を下げた。


 俺としては普通にクエストを受けその途中で彼女を助けただけなのでここまで言われる覚えもないし、帰れないほど遠くまで行ったわけではないのだが、こうまでさせてしまったので一応謝っておくことにした。

 謝った後もエレザは少し不機嫌そうな顔をしていたが、俺はそれに構わず今までのことを説明することにした。


 まず、スライムの討伐はケガもすることなく無事終えたが大量(といってもそう感じただけだが)のスライムに一時取り囲まれたこと、そのあとにゴブリンに襲われそのチームの9割が倒れ美少女一人となったところを偶然近くまで来た俺が居合わせそのままゴブリンを射殺したこと、ここまでこの子が歩くことができなかったので仕方がなく背負ってきたため予定より大幅に到着が遅れてしまったことを伝えた。


 俺の必死そうに話しているのを見てエレザはやっと理解してくれたのか、深いため息を吐き、俺に近寄り手を差し伸べ俺を立ち上がらせてくれた。


 「それならよかった、こっちも心配しすぎたのかもしれないな、悪いがワタのことを過小評価しすぎていたようだ」

 「こちらこそ、何もエレザたちに伝えないでクエスト行ったのも悪かった」


 「ワタの話を聞く限りどうやら本当に魔物が大量発生してたようだな、しかも残念なことにもう犠牲者も出てしまった、でも幸いなことにこの子だけは何とか救えたようだな、しかしいくらゴブリンとて10匹やそこらではまともな冒険者であればそうそうやられるはずもないのだが……そもそも君が何者かを知らなかったな」


 エレザは一定の考えに落ち着くと、いまだ状況もつかめず視線が泳いでいる美少女へと顔を向け俺も聞けずにいた名前を聞いた。


 すると声をかけられた彼女は今まで話の輪にすら入っていなかった自分が急に当事者になったことによって軽くパニックを起こし素っ頓狂な声を出したかと思えば丸い大きな目をさらに大きく開いたまま止まってしまった。

 しばしの沈黙の後彼女は少しの冷静さを取り戻すと静かに口を開き始めた。


 「私はステラ・エルヴィア、冒険者ギルドのハミルアーミー所属だ、話に出ていたモンスター大量発生の予想を聞きつけ10名のメンバーを引き連れセレデア郊外付近を警戒中だった」


 ステラはしゃべり始めると今までの弱々しそうな女性の印象からとうってかわって歴戦の兵士然とした口調になり、こちらは予想と違った反応を返され目を白黒させるばかりだ。

 

 「で、その途中で襲われたと?」


 エレザはそんな変化をなんとも思っていないようでステラに話の続きを促す、それに応じてステラも表情すら変えずにただ淡々と話を続けた。


 「いや、正確にはこちらから仕掛けていったつもりなのだが、気付いた時にはすでに敵の手の中にあったらしく、最初こそこちらが圧倒的有利な状況でことを進めていたが、魔物の数が予想以上に多く時間がたつにつれこちらも消耗しはじめ徐々に押されていってしまった、ただそこまではまだよかったのだが、ある程度魔物が倒し終わり一旦休息をとろうと少し離れた位置で座り込んで休んでいたところを不意にゴブリンの群れに遭遇してしまいそこで完全に気を抜いていた仲間達が次々と討ち取られていってしまった」

 「そうか、それは残念なことだ」

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