13.宿へ
ステラはエレザの最後の言葉に引っかかったのか顔をゆがめて見せるが、ふと思い出したように俺のほうに向きなおり頭を深々と下げてきた。
「ワタ様、今更ではありますが此度は私をお救い頂き大変感謝しております、ただどうしても気になるのが戦っていた時に使っていたその黒い武器ですがそれはいったい何なのでしょうか?」
「そういえば今更だが私も聞いていなかったですね、普段は人の武器に深くは詮索しないようにしてますけど」
今までただただ怪しいものを見るような目つきでこの銃を見られてきただけだったが、この世界に人々にとって異形な姿形をしていることもあってさらに不審がられてしまっていたのだろう、そういうこともあってかこれまで誰からも疑問を投げかけられなかったが、ステラはこの銃を使った戦闘を目の前で実際に見てしまったことによって、この世界にはない動きと“音”であったことに疑問に思ったのであろう。
対するエレザは遠くではあるものの実際に見ていたはずだが、言っていたようにこのことについて言及はしてこなかった、しかし今になってこのことに対して興味をもったのかこの銃に視線を移している。
「ああ、これのことですか?簡単に言えば小さい鉄球のようなものをこの武器の中から発射して敵を射殺すもので、それがこれの大きさによって使う場面が違ってきて、手に収まる程度の大きさのものは近距離での戦闘に向いていて、この長いものはより遠くの敵を倒すのに向いている……とこんな感じですかね?」
こちらの世界の人からしたら適当もいいところだが、この世界の住人にとってはこの説明で満足いったようで、エレザもステラもどうやら理解したようでうなずいてくれていた。
俺自身はこれで伝わると思っていなかったので内心びくびくしていたが、エレザたちの反応に正直びっくりした、そもそもこういう武器自体がないのでそれも当然なのであろうが……
ただ今後深くかかわっていく人たちにはしっかりと説明していくつもりだ。
俺の説明(適当)を聞いたステラはさらに興味を示したようでこの銃に触れてみたいと迫ってきたが、こちらの世界でもそうだが銃に関して知識がない人が安易に触って暴発(何かの衝撃などによって弾が発射されてしまう現象)によってけがや死者が出てしまうと困るので丁重に断った。
するとステラはすねたように唇を尖らせうなっていたが、そんなことは気にせず俺はエレザに少し気になっていたことを聞いた。
「モンスターが大量に発生していたって言っていたがそれはどの程度のことなんだい?」
「一応情報では数十体と聞いていたが実際にはもっと多く発生しているようだな、現に他のパーティーも多数のモンスターに遭遇したようだし、実態はよく分かっていないようだな、なぜそんなことを聞く?」
「いや、さっき戦った時この武器でなら一対大多数の戦闘になった時にもこちらがある程度有利な状態で戦えるなら俺もこの討伐に加わってみようかなって思ったから、でも、俺はここに来るまで大した戦いをして来てないからとっさに襲われた時には対処できないから誰かについていこうかと思ってさ」
斯くいう俺だが当然戦闘経験がないし、とっさにとれる行動も素人に毛が生えた程度なのでその部分のフォローをしてもらいたいというのもあるが、実際のところ実戦経験を今のうちに多く積んで銃の扱いに慣れたいからだ。
「そうか、ならステラと一緒に行ったらどうだ?丁度いいことにこの武器のことも知っているししかももう見知った仲だろう?」
「「え!?」」
するとさも当然のようにエレザは俺とステラがペアになって戦ったらどうだと薦めてきた。
それを聞いた俺とステラはお互いに顔を見合わせながら素っ頓狂な声を出してしまっていた。
「い、いやそうだけど……ステラ的にはどうなんだ」
「……でも、それもありかもしれないですね、その武器があれば一騎当千でしょうし」
ステラは一瞬考えた顔をしたかと思いきや一転どこか喜んだような顔をしながらエレザの意見に賛同し始めた。
「ほ、本当にそれでいいのか?知り合ったのだってついさっきのことだし、あまりお互いのことを知らないだろうしさ……」
「いえ、ワタ様ならこの身を預けられると思いまして……」
「そ、それならいいんだが、それよりワタ様はやめないか?」
「そのまま呼ばせてくださ……」
言葉を言い切る前にステラはなぜか頬を赤らめながらうつむいてしまった。
そんな彼女は、思えばあんなに満身創痍だったはずのステラだったが、顔には多少の疲れはうかがえるがそれ以外は何ともなさそうな感じだ。
「そうと決まれば今日は二人でゆっくりと話すといいさ、ステラの分も宿代は私達が払っておいてやろう。じゃあなお二人さん」
エレザはそういうとさっさと取り巻き達を連れ、宿の方向へと向かって行ってしまった。
(にしてもさっぱりとした奴だなぁエレザは……それにステラの宿代まで出すときた、心も広ければ懐も広い、これは相当な大物だな。そしてこの後ステラと二人きりってことは…ウフフ)
エレザが見えなくなった後、内心ニヤつきが止まらない俺だが、表面上は冷静さを保ってさも何も思ってないですよ感を醸し出しつつステラを宿へと連れて行こうとする。
ステラもこの後のことをなんとなく察したのか、さっきまでの騎士のような凛とした態度からしおらしい女の子のような反応に変わっていた。
そして俺は少しの期待と楽しみを胸に宿へと向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます