1.その日は突然に


 以前、これと似た友人の物をいじっていたので、手慣れた手つきでLiSMを操作し召喚のメニューを開いてみる。


 するとそこにはさまざまなカテゴリに分かれていて小さなものは小銃の弾から大きなものは航空母艦等もある。恐ろしいぐらいにだ…ただこれが召喚出来るってお決まりのチートじゃね?


 そうなればまずは服装からどうにかしなくてはならないので、陸上自衛隊の迷彩服三型と88式鉄帽(ヘルメット)等を選ぶ。

 完全に陸上自衛隊員そのものの外見になったが、これで一先ず困ることはないだろう。


 次は、護身用や近距離戦闘用で拳銃を今後必要とすると思ったので、拳銃の欄からP226というシグザウアー(SIG SAUER)社が開発し、9×19mm パラべラム拳銃弾(現在西側諸国で標準的な最も有名な弾)を使用する自動拳銃を召喚することを決めた。


 この拳銃は長時間水や泥につけても確実に動作するほど耐久性が高く、その信頼性と耐久性から厳しい状況で戦う特殊部隊や警察と警察系特殊部隊などが用いているようだ。

 それを召喚しようとLiSMの画面の“召喚”というボタンを押すと同時に目の前の地面に淡い光と共にそれは現れた。


「おおっ!」


 そこに現れたのは、間違いなく地球にもあったP226と迷彩服とヘルメット・ブーツそのものだった。

 自衛隊の装備は基地の一般公開の時やミリオタの聖地(勝手に俺がそう呼んでいるだけ……、じゃないはず)の秋葉原周辺にあるミリタリーショップで実物を見たり実際に着たことがあるのでこれらに関してはまず間違いないだろう。


 ただ、銃に関しては実物を触ったことはないが、今となっては前にミリタリー関係の動画や本を漁ったり、サバゲーが趣味だったのでそこで得た知識(付け焼き刃的なものが多いが)やエアソフトガン(実銃に限りなく近い形、重さで作ってあるものが多い)あったからそう思えたのだ。


 とりあえず俺は誰かが来る前に各装具を身に着ける。


「よし!これで、ひとまず自身を守ることはできる。だけど……そもそもここはどこや!!責任者出せ!」


 すると、その言葉を聞いてかLiSMが反応する


「落ち着いてください、先ずこのLiSMの説明をさせてください」

「おう!この際だから聞いてやろうじゃねぇか!」


 もう、この時点でいろんなものがどうでもよくなってきた。


「このLiSMはいつでもどんなものでも召喚出来ます、しかし急に航空母艦や、戦車を出してもあなたに配下が誰もいなければ運用してもらえないのでご注意を。ただ、初めてでも使えるようにする為のマニュアルをその人に自動的にインプットさせる機能付きなのでご安心を!そして最後に、このLiSMの便利機能をお教えしましょう。召喚画面の下にあるマップ機能です」


「あら便利!……じゃなくて、俺に何を求めてるのさ?」

「あ~それはですね……あっと!いけないこんな時間!それではお元気で!」


 それを以降このLiSMから音声が流れることはなかった。


「おっ、おい!ちょ、待てよ!嘘でしょ!?放置ですか!」


 結局、的を得た回答が返ってこなかったことに、俺は半分発狂していた。

 しかし、こんなこと言っててもしょうがないし、ここでとどまっても埒が明かない。

 まずはこの状況を知るために、俺は周囲を探索することにした。


 

 突然のことでよくわからないまま放置された俺は、ここにいても埒が明かないのでとりあえず周辺を歩いてみることにした。

 実銃を持っていること以外はまるでサバゲの野外フィールドを歩いているかのようだ。


 もといたところから、何かないかと探索しようと辺りをうろうろしていると、少し開けた場所に行きついた。


 しかし、少し離れたそこには、期待はずれの何かうごめく物があった。


「こういうときに限ってこれだよね。やっぱり出ますよね魔物ちゃん、テンプレだわ。というか、もうここ、日本じゃないよね?」


 目の前に出てきたのはあのド○クエなんかに出てくるス○イム。

 あの青くてプルプルした魔物的なやつだ。

 俺はこれを見た瞬間、ここは俺がいた日本ではなく、全く別の所謂”異世界”というやつなんだと察していた。


 ただ、まだス○イムはこちらに気付いていない、ただあちらまではざっと100mぐらいはありそうだ。

 この距離では拳銃であるP226では到底届きそうもない。

 弾は”届く”だろうが、実銃を初めて撃つド素人の俺にとっては当てる自身がない。

 実際どっかのサイトで見たアメリカ人が大体20mの静止目標を拳銃で撃つ動画があったが、その人達が狙って撃ってようやく的の中心にあたるかどうかだった。たまに某特殊部隊の人達やほぼ毎日射撃をしているようなプロであれば話は別であろうが。

 さらに、同じアメリカの警察や軍隊でもかなり近づいてから撃つことを推奨しているぐらいなのだから、俺にはもっと無理だ。


「この距離ならSIG716で撃った方がいいな」


 そういったことだけは頭にあった俺ははなから拳銃を構えるようなことはせず、SIG716を構える。

 拳銃はその小ささ故に両手で構えるか片手で構えるが、ライフルと名の付くものは、両手に加えて銃床(ストックとも呼ばれる)と呼ばれる部分を肩に当てることによって狙いが定めやすくなっている。


 さっそくマガジン(弾倉)を挿してチャージングハンドル(弾を込めるときに引く槓桿と呼ばれる部分)を引いて初弾を装填して、持ち手の近くにあるセレクタと呼ばれる部分をセーフティ(安全状態)からセミオート(単発)にする。

 ここまではエアソフトガンのガスで作動するものを扱ったことがあるので(ガスとBB弾を使う以外実銃と大体同じような動作をする)難なくこなせる。


 立ったままの状態で少し前のめりになるように射撃体勢を整えた後、スコープ(小さい望遠鏡のようなもの)がないので、今はアイアンサイト(銃本体に元々ついている照準器)を使う。

 初めて撃つので、俺は適当にそこらへんにある木に向かって試し打ちをする。


 ダンッ!


 今までガスガンや電動ガンしか撃ったことがなかったので実際に撃ってみると、発射の反動で銃本体が上に持ち上げられ、手や腕・肩には激しい振動が襲ってきた。

 少々大袈裟な表現だが、こうなってしまったのは構えや射撃姿勢がしっかりしていなかっただろう。

 狙った木の幹の真ん中に弾が当たったことによってできた痕ができていた。

 どうやら、初めての射撃で見事当てることができたようだ。


 (おおっ!これが実銃の反動か!)


 何とか狙って当てることができるという事が証明できたので、今度は”やつ”を狙って撃ってみる。


 ダンッ!


 撃った弾はス○イムに見事命中していた。


 ス○イムの体のほとんどが銃弾により大きく穴があいていて、近くには体の一部が飛び散っている、生で見ると意外にグロい。


(やっぱ現実ですねこれ、やばい吐きそう…)


 ライフルや拳銃はエアガンを撃ったことがあるので、反動がある以外驚くことはなかった。

 いきなり魔物に遭遇して思ったが、やはりここは異世界に違いないようだ、目のまえにある惨状も射撃した実感も夢ではなく現実のもので間違いないだろう。


 後で知ったが武器や車両を召喚すると同時にそのものの使い方や整備の仕方等の情報の全てが使用者の頭に直接インプットされるようだ。

 これならもし誰かに召喚したものを使ってもらうことになっても、教える必要がなくなる。



 途中何回かスライムと戦闘(ほぼ一方的)しながら森を抜けるために足を進めていく。

 それからどれだけ経ったかわからないが森を抜けることに成功する。

 森を抜けるとそこには、木が一本も立っていないような草原が広がっていた。


(ここから、俺の新たな人生が始まるわけか……、かなり強引だったけど)



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