2.ここはどこ?

 

 とりあえず、第一村人的な人を探すためだだっ広い草原を歩いていく。

 ただただ広い草原が目の前に広がるだけで、周辺には遠くに山と森が見える以外何もない。

 

 本当に何もない。


 (これじゃあ、異世界に来たというより誰もいない屋外フィールドにサバゲやりに来た人みたいにない?)


 歩いても歩いても、人や村すら見えてくる気配がないので、歩きながらLiSMを開いてみる。


 LiSMを操作してみてわかったことは、まず兵器関係では銃のような小火器から榴弾砲などの重火器等が。さらに戦車や装甲車のような車両や戦闘機や戦闘ヘリといった航空機、もちろん戦艦や空母なんてものまで召喚できるようだ。


 それ以外では電車や橋(丸ごと)、建物、食料、日用品など多種多様なものが召喚できるようだ

 細かく見ていくと飲み物ならコーラや缶コーヒーがあり、低反発ベットとか本当に色々ある。


 ついでにP226をズボンとベルトの間に挟んだままでかなり危険なので、腰につけるナイロンタイプのホルスターも召喚しておいた。


 草原を歩いていくと途中獣道があった。

 その道の続く方向を見ると、200mほど離れたところに人の集団のようなものを発見した。


(これはまさかと思うけど……)


 すかさず、スリング(吊り紐)で肩にかけていたSIG716を伏射(地面に伏せて撃つこと)で構え、さっきの戦闘のあと召喚して装着しておいたACOGタイプ(倍率無可変で4倍率)のスコープで観察する。

 よく見ると馬車を取り囲む一団と、その一団をさらに取り囲む一団がいる。


(えっ……、これってもしかしてテンプレなイベント発生ですか?)


 そう、まさしく目の前では盗賊と思われる一団に襲われている馬車とその護衛らしき人達が戦闘開始寸前であった。


(ここは、救出すべきだろうか?)


 救出すべきか悩んでいるうちに、事態は進んでゆく。

 事態が急変したのは、馬車から一人の女性が出てきてからだった。


 その女性が号令のようなのを発したのか、周りの護衛たちはいっせいに斬りかかる。

 しかし、多勢に無勢でおそらく10名ほどいた護衛は怪我をしたのか息絶えてしまったかで、残るは指揮官と思われる女性含め4人となってしまっていた。


(くそっ、人は殺したくはなかったが……)


 ついには女性が盗賊の手に渡りそのまま人質になってしまっていた、その護衛たちはもはやこれまでと思ったのか、降伏を示すように武器を捨て両手を上げている。

 

 俺は元の世界では当たり前だが人を殺めたことなど一切ないし、喧嘩なのするような性格でもない。

 とはいえ、目の前で襲われ今にも殺されそうになっているのを見て何もせずただ見ているのも違う。

 

 ここは躊躇している場合ではないと覚悟を決めた俺は、SIG716にマガジンをさし、チャージングハンドルを引き、弾を薬室内に送り込んだ。


 次にセレクタを親指の腹でセーフティからセミオートに切り替え、盗賊のリーダーと思われる奴の頭に照準を合わせる。


 照準を合わせたのは良いが、いざトリガーに指を掛けようとすると手が震えてしまう。

 先ほどはスライムを平気で撃ったというのにこのざまだ。


 (やはり人は殺したくない、でもあいつらを撃たなければほぼ無防備になっているあの人達の命が危ない……。でも……ここはやるしかない!)


 しばらくの間俺は葛藤するが、再度覚悟を決め息を整える。

 そして、大きく深呼吸し息をゆっくり吐き、吐ききる前に息をとめ、震える指を何とか抑えトリガーにゆっくりと指をかけた。その指に徐々に力をかけてゆく……。


 ダンッ!


 撃った弾は狙い違わず、目標である一団の頭に命中し赤い花を咲かせた。

 

(当たったぞ!)


 続けて他の目標にも弾を撃ち込んでゆく。


 ダンッダンダン……


 7.62㎜NATO弾という大き目の弾丸を撃っているため、大きな破裂音を響かせながら次々に弾を当てていく。

 弾を撃ち切るころには人質となった女性の首に刃を突き付けているもの以外は、物言わぬ塊となっていた。


 (とうとう、やってしまった……。でもしょうがなかったんだ、こうするしかなかった)


 人間を撃ってしまった事に後悔を覚えながらも、弱い立場の人を守る為だったと自分自身を慰める。


 残った盗賊は何が起こったのか理解できず、人質の首に刃物を突き付けたまま、ただ茫然と立ち尽くしていた。


「くそッ!今日はなんて日だ!」


 不満を吐露しながらも、俺は“現場”まで駆けていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る