第4章 起こり始める変化 その5

 山村はベッドに入り、かれこれ三時間近く眠れずにいた。

 だるい。

 やる気が出ない。起き上がる気もしない。

 どうしてこうなってしまうのかはまるでわからないが、雨だけは苦手だった。

 帰宅するなりベッドに直行し、それでずっとそのまま。だが寝てはいない。入っているだけだ。

 いつからだろう。雨の日にこれほど体調が悪くなるようになったのは。

 生まれつきだったような気もするし、ある日突然だったような気もする。

 うまく考えがまとまらない。

 なにも考えられないし、どうせ眠れやしない。

 ならばと全力を使ってテレビのリモコンを探る。普段からベッドの頭に置いてある。取るのは楽なはずだ。

 それでもなかなか見つからないので、もうあきらめるかと考えた途端に手になにかがぶつかる感触があった。

 ひどくゆっくりとした動作で、赤外線射出口を受光部に向ける。

 ぶうん……画面が揺れたようになってテレビが起動した。まだなにも映ってはいないが、別になにかが見たくてつけたわけではない。気晴らしになるかと思ってつけてみただけだ。

 ようやく鮮明になった画面には、なにやら大きな物体が映っている。凄いスピードで動いているように感じるが、よくわからない。

 なんとなくチャンネルを変えてみる。

 そこでは何人かの人間がなにかについて話している。それがなんなのかはまったくわからない。

 また変えてみる。

 そこは最初と同じように、なにか大きなものがうしろにあり、正面には数人の人間が並んでいた。どうやら日本のものであるらしい大きな模型がある。そこから同心円がいくつか見える。

 誰かがその模型を持ち上げた。すると、そこにはなにもなくなり、青一色になった。

 チャンネルを変える。

 画面にでっかく文字。『藤原和也』

 もう飽きた。

 最後にもう一度だけチャンネルを変えると、どこか心地のよい音が聞こえてきた。一定の音が永遠に流れ続けている。目にはノイズしか入ってこないが、それでももう手を動かす気にはなれない。

(ここでいい)

 山村は目を閉じた。

 なんだかこのまま眠れそうな気がする。

 画面では俗に言う『砂嵐』が延々とノイズを発生し続けていた。

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