第23話

「・・・何する気ですか」

 持ち上げたことで鳥の頭から蠢き出ているものが、より一層わかる。夜人は釣り竿を握りながら人差し指を真っ直ぐ上に伸ばした。

「日の出を待たなくても“これ”が干涸らびそうな所があるじゃないか!」

 楽しそうな夜人の表情から直樹も一つ心当たりが浮かぶ。

「一応、何処か聞いてもいいですか?」


「火の家さ!!」


 そろそろ宵宮も終わりが近いのだろう。喧噪が段々と弱まっている。

「・・・・・・・・・焼却炉じゃないんですよ。あの家」

「ナオもにたようなことしてたじゃん」

「あれは靴投げ入れただけだから」

「まぁまぁ、誰もが似たような考えということさ。燃料を投げ込んでいると思えば良い」

 夜人曰く、あの燃え続ける家は時折、火が弱まるらしい。これもどこまで本当なのか疑わしいところではある。それに、と夜人は続ける。

「道端に放置して、新たな寄生者を出すより良いだろう?」

「あー・・・そうですね」

「キミ、考えるの面倒くさくなってきてないかい?」

「そんなことないですよ」

 その通りである。

 初対面である夜人に対し、どこまで信用を寄せて良いのかなど不明な点はいくつもあるが、奇妙な鳥の頭の処分を任せることにした。

「それでは、あの家まで運ぶのお願いしますね」

「ワタシが?」

「はい、今手に持っているので」

 直樹の言葉に夜人は頬を掻く。

「・・・仕方ない。任されよう」

「ありがとうございます」

 

両の手にそれぞれ釣り竿と鳥の頭を持った夜人は軽く膝を曲げ、跳ぶ。すると、そのまま浮き上がり近くの塀の上に着地した。


「そういえば、首無しの“彼”について聞いても?」

 実は首無しと出会うのも、直樹にとって今晩が初めてであった。。

「良い奴さ。不器用だが、良い奴なんだ。だから・・・責めないでやってくれ」

 すぐ走り去ってしまったのは真っ先に謝罪をする相手がいたのだろう、と夜人は言った。

「わかっています。きちんと挨拶をしたかったので」

 直樹も蹴り飛ばそうとしてしまったことを謝罪したかった。

「それなら、ワタシから伝えておこう。“彼”は日中も動いているからね。近いうちに会えるさ」

「わかりました。それもお願いします」

「あぁ、それじゃあ良い夜を」

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