第10.5話

とある回想 一


 その家は大雑把な家系であった。杜撰であったとも言える。

 大らかな性格の父と天然な母から生まれた息子も、両親を反面教師として育ったわりには粗雑な性格であった。それでも家族全員、責任感は人並みに持ち合わせていたおかげか、暮らしにくいと感じたことは少ない、と記憶している。

 程よい放任、程よい干渉を享受する日々を過ごした中で、今でも色褪せない記憶がある。大雑把な家族であるのは知っていたが、さすがにこれは度が過ぎているだろう、と呆れた光景でもあった。


 しかし、それを彼らに伝えることはしなかった。例え、灯されたままの火が可燃性のものに移ったとしても、その状況を人の言葉で伝えられるほど自分は魂を消費していなかったから。


だから、こんな。


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