阻止

 山梨では干し柿の話題が多く出始めた十一月。残業、出張、休日出勤と急に忙しくなり、カフェ龍からしばらく足が遠のいていた。せめてみんなの様子だけでも知りたいと思いSNSをチェックするも、まったく更新されておらず、やはり虫が減ったためか情報交換会の開催予定はなさそうだった。更に十二月になると、プロジェクトは大詰めとなり、最もトラブルが多く且つ工程の期限の厳守を求められる段階に入った。期日とトラブルとのせめぎあいに、自分の胃痛との戦いが加わった頃、気付けば日の出時刻はめっきり遅くなり、朝晩の寒さが東京とは違うことを実感せざるを得ない季節となっていた。そんな中、久しぶりに山梨で週末を過ごせることがわかった金曜の夜、明日はカフェ龍に行こうと思って就寝したことがあった。しかし、朝起きると雪交じりの雨が降っていて、ビジネスシューズと撥水のスニーカーしか持たない僕は、コンビニまでの道中二回ほど滑り、一回手をついて転んだことで、あの坂を上ることを断念せざるを得なかった。何かが僕をあの店から遠ざけようとしているのではないかと疑いたくなるほど、その後も慣れない寒さと疲れからインフルエンザに罹ったり、東京で行われた古田の結婚式に出席しているうちに雪で特急が動かず山梨に戻れなくなったりした。あれほど毎週末に近い頻度で通っていたのに、僕はこの数か月もの間、店長のコーヒーにありつける機会を逸していた。

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