第2話 魔法使い目指す
〝この世界の人間は少し特殊な見た目で生まれてくる。全員白髪、瞳の色は魔法属性の適性を表す色をして。
産まれたばかりの場合、瞳は白が強くとても薄い色をしている。
水を操る魔法の適性を持つなら淡い水色に。
炎に操る魔法の適性を持つなら淡い火色に。
自然と関わる魔法の適性を持つなら淡い草色。
というような瞳の色になる。
そして10歳ぐらいから徐々に色が濃くなっていく。鍛錬を積み、魔力量を増やすことで最高色に近づく。最高色の者は己の力を誤魔化すために色をあえて薄く見えるように幻影魔法をかけるらしい。
そして成長すると髪の色も変わっていく。産まれた地域の気候ごとに色が違うらしい。魔力量が増えると髪の色の濃さも変わるのだとか。
この世界の魔法属性は大まかに分けて五個。
水、炎、自然。そして希少種の光と闇。
そしてそこから一人一人の天職にあった
適性のおおよそは遺伝だが親の属性を全く引き継がない者も少なからずいる。
極稀に己で新たな属性、魔法を生みだす才を持つものが現れるのだとか......〟
バロルス家の三男として産まれた俺―――ヴィーリオ・バロルス、六歳。
家族みんなに愛されてると感じながらここまですくすく育ってきた。でも、どうやら身長だけは育ちにくいらしい。六歳男児の平均身長より4センチほど低いと兄様達に言われてしまった。
俺は名前だけみればかなりカッコイイ男らしいやつ。でも実際は全然違う。
美人の父様と母様から産まれたのだから、俺が美人なのは言うまでもないのだが、なぜか母様に似たらしく女の子みたいな愛らしい見た目となってしまった。母様は東の大地で産まれたから漆黒の髪をしている。腰に届くぐらい長い髪は光を受けてきらきらと輝いていた。そして、光属性を意味する百合色の瞳はいつも優しく俺を見てくれる。
そんな綺麗な母様に似ている俺は
母様に似ているのが嬉しくないわけじゃないけど、背が低いというオプションが追加されて女の子と間違えられることも。
女の子と間違えられるのは見た目だけじゃなくてみんなが俺を『リオ』と呼ぶことも原因の一つだと思う。
可愛いと言って貰えるのは素直に嬉しいが女の子みたいと言われるのはあんまり嬉しくない。
母様よりも父様に似たかったという願いは母に悪いので隠しておくとしよう。
そしてそんな俺は今ものすごく大事なことを俺の人生に関わることを調べている。とても難しい本を読んでるけど、父様や兄様達が文字を教えてくれたおかげで読めないわけじゃない。ちょっと難しすぎるかもしれないけど......。
その大事なことっていうのは俺の瞳のことだ。色がないとかそんな不気味な事じゃないんだけど、不思議な事ではあると思う。
一つ目は瞳の色が変わるということ。
緋色や、藍色、柚葉色、百合色、墨色といった五大属性の色に。
そしてそれは俺が全ての適性を持っているということを意味するのだとか。
二つ目は俺の瞳が色が淡い色じゃなくて濃くハッキリとした色だということ。
火色ではなく緋色。水色ではなく藍色。若草色ではなく柚葉色。
普通は10歳ぐらいから歳を経るごとに濃くなるはずの瞳が五歳の時点で最高色になっている。実際ならありえないことだって言われた。
この俺の瞳はかなり特殊らしくて今まで確認されたことがないらしい。とても珍しくて誰かに知られると危険だからこのことを知ってるのは家族と父様に仕える使用人たちだけだ。
家族みんなが俺の身体のことを調べてくれているけど、せめて自分のことぐらい知っておこうと思って今父様の書斎にきて瞳と魔法に関する本を見せて貰っていた。読んでみたけどやっぱり難しすぎてどれもあんまりわかんなかった。
でも一つだけ俺の瞳と関わる絵本があった。最強の魔法使いのお話だ。
『五色の瞳をもつ魔法使いは最強の魔法使い。悪い魔物がでたら退治して、苦しむ人がいたら魔法で助ける。心優しい魔法使い。世界に愛された魔法使い。』
そんな感じで始まる魔法使いの冒険物語だった。そのことから考えると俺は最強の魔法使いになれるはずだ。だから俺は最強の魔法使いを目指そうと思う。誰にでも優しい強い魔法使いを。
目標が出来たのはいいことだと思う。父様もいつも目標を持って行動しろと言っていた。
だけど、俺の瞳のことについては全く収穫がなかった。ほんの少しだけ残念な思いを抱えながら父様の書斎を離れるのだった。
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