光速の第一歩 その22

022


「なあ、ひとつ聞きたいんだけどよ?」


 浅川さんは地面に仰向けに倒れこんだまま僕に問いかける。


 どうやらもう立ち上がる気力もないらしい。


「何ですか?」


 僕は聞き返す。


「俺でも、こんな俺でも、ヒーローになれるだろうか?」


 それに対して、


「だから、なれませんよ」と、僕は突き放すように答える。


「……」


「でも、目指すしかないでしょう?」


「……そうだな」


 そこまで話したところで、浅川さんの意識は落ちて、そのまま気を失ってしまった。


「頑張ってください。そんな役目はきっとあなたにしかできない」


 当たり前だ。なぜなら、僕は残念ながらもう普通の人間ではない。ゆえに宇宙人である僕がどんなに夢を見せたところで、それは再現性のないまがい物の夢でしかない。


 僕は、倒れこんだ浅川さんに背を向けると、そのままゆっくりとした足取りで、その場を去っていった。

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