光速の第一歩 その16
016
――死ぬかと思った。
と言っても、ここ三日間で何度も死にかけた身からすれば、今さら死にかけた経験が一回や二回増えたところでどうということはない。
「まあ、そのおかげで前より少しはましになったか」
まあ薄々勘づいているとは思うが、昨晩発電所に侵入したのは――俺だ。
昨日から何度かこの力を使ってみて何となくではあるが、分かったことがある。それは、どうやらこの力は『
おそらく、俺の手に入れた力は、体の中の電気信号を強化し、さらにそれに耐えられる筋力に体を作り替えたのだと思う。最初に食らったあの電流で、体の構造を作り替えられたのだろう。
そして、俺が走るとき、正確に言えば俺が走った後には、ビリビリと漫画で見るような電気の走ったような跡が見える。
少なくとも、この力が『電』に関係していることは間違いない……はずだ。
そこで、俺はある仮説を立てた。――それは『もう一度、最初と同じくらい強力な電流にあてられるとより速く走れるようになるのではないか?』というものだった。
今考えても、バカな考えだとは思う。だが、俺がもう一度『挑戦権』を得るためにはこうするしかないと思った。
――そして、俺は賭けに勝った。
「さて、そろそろ体も回復してきたし、行くか」
目指すはヒーローの住む街。挑戦権を手に入れた俺はもう一度、あのヒーローを倒して、
――俺が、ヒーローになる!
そう言って走り出した。それはもはや光すらも超えた速度だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます