光速の第一歩 その10

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「やっときたか、ヒーロー」


「だから、僕はヒーローなんかじゃないって」


 僕と村雨が現場に到着したとき、昨日助けた男性がまだ火がおさまっていない研究所の屋上で僕たちを待ち受けていた。


「村雨、あの人が『そう』なのか?」


「ええ、あの男性が、新たな超人よ」


「……そうか」


 僕は村雨を後ろに下がらせたあと、目の前の男性に話しかける。


「あの、すいません。僕たちは『超人集団アブノーマルリーグ』に所属しているものです。僕は久間倉健人といいます。そして後ろにいるのが村雨類。決して――」


『あなたの敵ではありません』と、言おうとした僕の頬を目にも止まらない速さで殴りかかってきた男性の拳がかすめた。


「俺は浅川万里。待ってたぜ、ヒーロー!」


「……話し合いの余地なし、か」


 僕は浅川から距離をとって応戦する姿勢をとる。


「久間倉君、だったか? お前は俺の速さについて来られるか?」


「何を偉そうに。ついさっき手に入れたばかりの力だろ?」


「……そうだな。でも――俺がずっと望んでいたものだ。それこそ、昔からな!」


 言うが早いか、浅川は再び僕との距離を詰める。


「――!?」


 僕は辛うじて浅川の攻撃を紙一重でかわす。


 燃え盛る研究所の屋上で月夜をバックに宇宙人と光速を越える男の文字通り目にも止まらない戦いが始まる。

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