光速の第一歩 プロローグ

『輝きたい』

 そんな想いはきっと誰しも持っているのだろう。かく言う僕にだって少なからずそんな思いはある。

 ――しかし、その誰しもが輝けるわけじゃない。


 一言に『輝きたい』と言っても、その中には様々なケースがあるのだろうし、もちろんそこにたどり着くための圧倒的な努力は必要なのだろうけれど、それでも一つだけ確かなことがある。


 輝くための、つまりスターへの階段を上るためには――絶対に躓いてはいけないということだ。


 これはいかにも誤解を生みそうな発言で、こんなことを言えばただでさえ低い僕の好感度がさらに下がってしまうだろうけれど、これだけは間違いないと断言できる。


 もちろん世間を賑わせているスターたちだって大なり小なり多少の挫折は経験しているだろうし、実際に彼ら彼女らスターたちがテレビの前で自分たちの過去の挫折や失敗談を話しているのを目にしたことは多いだろう。


 でも騙されてはいけない。なぜなら僕たちもよく知っているように――人生はやり直すことなんてできないのだから。


 確かに、彼ら彼女らスーパースターたちは過去にいくら失敗を経験したかもしれない。


 ――それでも、彼らは勝ったのだ。


 ここ一番の、人生でおそらくもっとも重要な場面で、チャンスを勝ち取ったのだ。


 もっと言えば、彼らはつまずかなかった。


 僕たち凡人どもがつまずいてしまった人生で、おそらく一度しか来ないであろう最大のチャンスをものにしたからこそ彼ら彼女らはスターへの階段を上り続けることができたのだろう。


 しかしそんなことができるやつらなんて、才能と運に恵まれた本当の一握りの人たちだけで、しかも得てしてそんな一世一代のチャンスでつまずいてしまった僕たちみたいな凡人たちにはもう二度とチャンスは訪れない。


 だからこそスターになれるのは――輝けるのは一握りの天才たちだけなのだろう。


 それでも残念なお知らせをすれば、多分もう二度とチャンスが巡ってくることはないと薄々分かっていながらも、人生は続いていくのだ。僕たち身の程を知った凡人は一般人として、その他大勢の一人として、躓いたあとの人生を生きるしかない。


 しかし、ここで大それたことを言わせてもらえれば、だからこそ僕はそんな夢破れた、躓いて輝くステージに立てなくなった人たちの味方でいたいと思っている。


 ヒーローではない僕だけれど、それでも『かつての』僕みたいな凡人たちの味方でありたいと、守りたいと思うのだ。


 これから話すのはそんな凡人たちの味方でありたいと願い、輝くことはできないけれど、それでも愛すべき凡人たちの味方でありたいと――ヒーローになりたいと願う僕『たち』凡人の物語。

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