第4話 狂ったパートナー その1

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 一ヶ月と少し前、つまり高校一年生の春休みに僕は宇宙人の少女に出会った。


『私、この星が好きよ。人間のことはあんまり好きじゃないけどね』と、あいつはよくそんなことを口にしていた。


 あいつと僕とは、決して心が通じあっていたとか信頼関係にあったとか――ましてや恋愛感情を抱いていたなんてことは全くなかった。


 あいつはどうひいき目に見てもとても美しい容姿をしていたし、何より『人』を惹きつける魅力に溢れているやつだった。


 もちろん僕も例に漏れず、あいつに心惹かれたうちの一人だったのだけれど、それはあいつにとってはあまりに当たり前にある、いわばありふれているものだった。


 だから、僕の『特別』はあいつにとって特別ではなく、平凡で取るに足らないもので――本当にただそれだけのことだった。


 でも、それも無理のないことだったのだろう。あいつはこの星の人間ではない『宇宙人』で対する僕はこの星しか他に知らないただの『地球人』だったのだから。


 僕たちはどれだけ言葉を交わしてもお互いの過ごした時間や価値観を最後まで共有することができなかったし、僕がそんな風に情けない地球人であったがゆえに、あいつはかぐや姫よろしくこの世界から去ってしまった。


 しかもそれは竹取物語のように月に帰るなんて優雅で趣のある結末では決してなくて、あいつは再び『宙』に帰るのではなく、僕の中に住み続けることを選んだ。


 それはまるでかぐや姫が月に帰るのではなく、はたまた求婚してきた貴族たちと結ばれるわけでもなく――それはかぐや姫が翁とともにゆっくりと老いていく道を選ぶようなもので、どう考えてもハッピーエンドではなかったけれど、残念ながらそれはトゥルーエンドではあった。


 それでも、翁と僕との間に大きな違いがあるとすれば、あいつを――僕が初めて愛した『人』を宙に帰すことなくこの世界から消し去ってしまったのは――紛れもなく僕自身なのだというところだろう。


『僕はヒーローなんかじゃない』


 最後にあいつと交わしたそんな言葉を僕は今も呪いのように心に刻みつけている。


 だからこそ、そんな卑屈な考えを持ち続けているうちにきっと僕は同じことを繰り返す。


 そうやってまた大切なものやこれからきっとかけがえのないものになったかもしれない人たちを見殺しにしてしまうのだろう。


 そんな風に、そんなつまらない過去のことをいつまでもうじうじと考えているような僕だから、だからこそ――


『僕はヒーローなんかじゃない』


 と、そんなことを思わずにはいられないのだろう。

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