翔ちゃんと!



 ☆




 翔ちゃんと、デート!


 電話を切った瞬間、絵美はベッドの上で、うわあっ、きゃあっ、と声を出しながら手足をバタバタしていた。大丈夫だよね、電話でちゃんと普通に喋れていたよね?


 デートだよ、デート。これは夢じゃないよね? 頬をひっぱたいて、痛っ、と声が出て、だけど痛みが嬉しい。


 最後に一度、両手両足でベッドをポスッと叩いて、はあ、と幸せの溜め息をこぼした。


 幸せが、上手く回っている。


 誰かが誰かを幸せにすること。それはキャッチボールのようにぐるぐると回って、エネルギー保存則に従って幸せの総量をそのまま保って受け渡し合う。翔ちゃんはお礼、と言っていたから、これはつまり、きっと、私が翔ちゃんに与えた分の幸せ。


 縫いぐるみをぎゅっと抱き締めながら、絵美は手帳を開いて予定を確認する。明日は時間がある。どうせだから、新しい服でも買いに行っちゃおう。



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