第6話

「次は~、ぬりかべ~、ぬりかべ~」




 早朝8時。


ロウは通勤に使う電車、物ノ怪ラインに揺られ、職場へと向かっていた。


各駅で一反木綿駅、ぬりかべ、かぐや月姫女学園前と通過し、目的地のシンジョクク警察署前駅で下車する。




(もののーけーたちーだけ~)




 発車のメロディに合わせ、ロウは心の中で口ずさんでいると、




「ねえ、聞いた? 紫式部のメンバーが……」




「あ、聞いた聞いた、ヤバいよね!」




 女子高生らがかん高い声で喋るのを耳にして、ロウは眉間にしわを寄せた。




(っせーな)




 もう一駅の辛抱。


次のかぐや月姫女学園前に停車すると、どっ、と女子高生が降りる。


一気に車内がガラガラになった。


















「おざーす」




 シンジュクク警察署の殺人課。


ここがロウの職場で、8:30から朝礼が始まる。


現在、8:29分で、いつもこの時間を狙って出社する。




「ロウ、すぐ出ろ。 お前の好きな焼死体だ」




「えっ」




 ドアを開けて早々、向かいの机に座っていた署長にそう言われた。


今日は何やら慌ただい雰囲気で、新人のウエハスが携帯を投げてよこしてきた。


それを右手でキャッチする。




「先輩、1番の携帯で」




「お、おう」




 大柄の署長は、相棒を付けるからとある一軒家に向かって欲しい、と言った。


エドが自分の席からキーを投げてこちらによこす。




「おっと」




 左手でキャッチし損ねると、鍵が床を滑る。




「オラ、ボサッとすんな。 車で相棒が待ってるから、急げ」




「んだよ、相棒って、お前じゃねーの?」




 訳も分からず、住所の書いてある紙切れを受け取り、駐車場へと向かう。


すると、見覚えのある顔が、パトカーの前に立っていた。




「……お前、何してんだよ」




 車の前に立っていた男は、先日逮捕されたおかっぱの男、ムロだった。


ムロは、殺人罪で3年の禁固刑を言い渡されていたが、主犯のサッキュバスに操られていたなどの理由から、もし警察の捜査を手伝うのであれば、刑期を短くしても良い、という審理を受けていた。




「なので、よろしくごぜーやす」




「……」




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