第4話
(魔法使いを自称してんのに、小1で習う魔法しか使えねーのかよ)
ロウは、思わずズッコケた。
ダンボも温度を上げる魔法であり、火に関連はしている。
しかし、人体発火を起こすのに必要な温度は、少なくとも200℃。
たかだか10℃、周囲の温度を上げた程度では、意味が無い。
(……いや、待てよ)
先程の焼死体発言といい、どこかクサさを感じさせる。
そう思ったロウは、ムロに質問を投げかけた。
「すいませんけど、もう少し時間いいすか? いくつか質問したいんで」
「何なりと、聞くが良い」
「早朝8時は何してました?」
「7時半に目覚め、顔を洗い歯を磨く。 テレビでニュースを見て、8時ジャストには家を出ましたね」
ペラペラと淀みなく自分が朝何をしていたのかを説明する。
まるで準備していたかのようで、更に怪しさが増す。
(ヤベ、もうコイツが犯人にしか見えねーわ)
胡散臭さ満載だが、犯人と断定するには早すぎる。
「えーと、死んだ黒焦さんとの関係は?」
「ただの隣人、ですかね。 ちょっと怖い人、くらいには思ってましたが。 あ、でも彼女はかわいいな、って」
「あ、それ、分かります」
そんな話はどうでもいい。
とりあえず、黒焦カズオとの関係は無い、とのことだ。
「じゃあ最後に、その杖の効力は?」
「……」
さっきまでヘラヘラしていたムロの表情が一瞬、固まる。
それをロウは見逃さなかった。
(痛いとこをついたか?)
しかし、すぐに気を取り直してムロは説明を始めた。
「こっ、これは、魔法を補助する杖。 威力を2倍まで引き上げマス……」
(……2倍、か)
それでも、20℃までしか温度は上がらない。
質問をし終えると、ムロは101号室へと戻っていった。
夜、部屋のソファで横になりながら、スマホを操作。
ロウが見ているのは、アマ〇ンのページである。
「……あった、コイツか」
ムロの使っていた杖と同じ物を発見。
値段は29800。
先端に丸い玉が付いており、長さは1メートル程度。
魔法の威力を2倍にするが、消費MPも2倍、とのことだ。
評価は平均星4.2と高い。
レビューを流し読みしていると、気になる項目を発見した。
「別売りのドラゴンヘッドに交換すれば、威力は10倍、だと!?」
ロウは、思わず起き上がった。
先端の玉を竜の頭に交換することができるらしい。
もしムロが、このドラゴンヘッドを持っていた場合、ダンボでも200℃まで温度を上げることが出来、人体発火を起こすことが可能である。
(まてよ…… まさかっ)
頭の中で、バラバラになったピースがはめ込まれていく。
ダンボ、ドラゴンヘッド、テンプテーション……
「……分かったぞ」
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