第3話
「とりあえず、ステータス、見せてくれ」
ステータスとは、いわゆる身分証明書で、そこに個人の能力が記載されている。
小島恵子は、財布を取り出し、そこからステータスカードを抜き取ると、ロウに渡した。
「……」
名前 小島恵子
職業 サッキュバス
HP 23
MP 35
魔法 テンプテーション
※相手を誘惑する 使用MP1
(火に関連する魔法は使えない、か)
もし小島恵子が嘘をついていた場合、人を燃やして殺す方法はざっと4つ。
1つ目はガソリンを撒いて火を付ける方法。
これは、部屋にガソリンを撒かれた痕跡があればすぐ発覚するだろう。
2つ目はガスを使ったガス爆発による方法。
これも上に同じ。
3つ目は火炎放射器などの重火器を使用する方法。
これは、入手すること自体が難しい上に、取り扱ってる店も限られるし、購入履歴ですぐに足が着く。
最後に、魔法を使う方法。
ただし、強力な魔法を使うには資格が必要となる。
ステータスへの記載も義務付けられている為、その線は現時点では捨てても良いだろう。
「小島恵子さん、鑑識結果が終わるまで、申し訳ないすけど拘留させて頂きますよ」
「え~、いいけど。 エッチなこととかしちゃダ・メ・よ?」
「……」
この後、鑑識が数名現れ、現場の調査。
ガソリン、ガスが部屋に残っている痕跡は無く、小島恵子が殺人を犯した可能性は極めて薄くなる。
(後は重火器、か)
ロウが、102号室の前で電子タバコを燻らせていると、向こうから男が一人、現れた。
「おや、おやおや? 一体全体、どうしたんですか?」
先の丸い杖を持って、おかっぱの男。
どうやら、このアパートの住人らしい。
「ああ、今朝、死体が発見されたんだよ。 このアパートでな」
すると男は、妙にでかいリアクションをとって、驚いた体をとる。
「し、死体ですかっ!? 一体全体、どんな焼死体が見つかったんですか?」
(……こいつ)
焼死体、とは一言も言っていない。
クサイな、と思ったロウは、ステータスの掲示を求めた。
「一応、ステータス出してくれ。 捜査の参考程度にな」
「ええ、ええ。 もちろん協力しますとも」
調子のいい男は、ステータスを財布から取り出した。
名前 ムロ
職業 魔法使い(自称)、コンビニの店員
HP 15
MP 10
魔法 ダンボ
※周囲の温度を最大10℃上げる 使用MP1
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