第2話

早速、車で死体の見つかったアパートへと向かう。


連絡をくれたのは、死んだ男の恋人、とのことだ。




「か、カズ君が目の前でいきなり、燃えたんです!」




 朝っぱらから彼氏が燃えるなんて、災難だな。


ハンドルを握りながら、ロウはそんな風に思った。


アパートの前に車を止め、外へと出ると、女が一人、立っている。




「あっ!」




 そう言って、パジャマ姿の女性がこちらに駆けて来た。




「えーと、連絡くれた焼死体の彼女さん?」




「もうっ、そんな呼び方やめて下さい! 私の名前は小島恵子ですっ、プンスカ」




(ぶりっ子か?)




 彼女の名前は小島恵子。


年齢は20で、職業はサッキュバス。


その証拠に、頭から小さな角が生えている。


うるせぇ〇らに出てきそうな、そんな出で立ちだ。


ちなみに、死んだ彼氏は黒焦カズオで、職業は悪魔、とのことだ。




「で、死体はコッチ? ドッチ?」




「アッチ、です」




 腕を引かれて、102号室の前までやって来る。


鍵を受け取り、ドアノブを捻ると、猛烈な匂い。




「おえっ、おええっ」




 思わず、玄関にゲロをぶちまける。




「やっべ、現場汚しちまった…… つか、人の焼けた匂い……」




 例えようのない、気持ちの悪い匂いが立ちこめる。


お邪魔しま~す、と部屋の中へと歩を進めると、いた。


黒焦げの、遺体。




(まーじでか)




 ロウは、携帯を取り出し、鑑識課に連絡を入れた。




「ちょっと、死体見つけまして…… ええ、かなりグロいす。 じゃ、頼みます」




 ぶつ、と携帯を切ると、手で口を押さえながら急いで外へと向かう。




「ぶはっ、すー、はー、すー、はー……」




 息を止めながら電話したため、危うく窒素するとこである。


新鮮な空気を吸い込むと、小島恵子が言った。




「死体とか、見るの初めて何ですか?」




「……は、初めてじゃねーわ」




「クスッ、かわいいですね」




「ばっ、馬鹿やろ……」




 といいつつ、お前もかわいいゾ、とか思っちゃうロウ。


オホン、と咳払いしつつ、事件当初のことを質問する。




 事件が起きたのは早朝の8時。


彼氏の黒焦カズオがスーツに着替えている最中に、突然燃えた、とのことだ。


冷静さを欠いた彼女は、ただ慌てるだけで、そのまま彼氏は死んでしまったらしい。




「私がもう少し早く水をかけてれば…… えーん、カズ君」




 えーん、えーん、と泣きマネをする彼女。




(何か、怪しいな……)

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