225章

ニコの体がひかかがやく。


それと同時どうじにアンの体も同じように光をはなった。


「ま、まさかッ!?」


クロエは思い出していた。


前にロミーの体をうばおうとしたとき――。


彼女のそばにいたニコと同じ電気仕掛でんきじかけの黒子羊くろこひつじルーが、たような光を放っていたことを。


ニコが発動はつどうさせたものは、アンの体をまもるだけではなく、クロエ自体じたいに何かしらの機能停止きのうていしいるものだ。


ニコが灰色はいいろ空間くうかんに飲みまれたため、クロエは完全に油断ゆだんしていたのだった。


アンとニコの体が光輝くと、体にさっていた配線はいせんはげしく動き始めた。


その大蛇だいじゃのようにふとい配線は、まるでくるしんでいるかのようにうねると、アンの体からはなれていく。


解放かいほうされたアンの傍へと走るニコ。


その様子ようすを、彼女と同じくつながった配線がうねっているクロエは、見ていることしかできなかった。


「どうしてお前が……生きているッ!?」


クロエは繋がった配線を体から離すと、ニコに向けて手をかざした。


だが、その開いたてのひらからは何も出ない。


マナのほのおあやつる力――。


キャスの水をながし出す力――。


シックスの風をこす力――。


クロムの大地をらす力――。


そして、ルーザーの光の波動はどう――。


クロエは、今まで彼ら以上の力を持って操っていたが、ニコの発動させた光の影響えいきょう能力のうりょく発揮はっきすることができない。


ニコは自分でも何をやったのかを理解りかいできていないのだろう。


表情ひょうじょうゆがめ、自分の掌を見つめているクロエを見てひどえていた。


「ニ、ニコ……お前なのか……?」


憔悴しょうすいしきっているアンが近寄ちかよってきたニコのゆたかな毛をでた。


怯えていたニコは、彼女が無事だったことがうれしかったようで、大きくいて返事をする。


だが――。


「ふん。まさか生きていたなんてね」


アンとニコの前にクロエが立っていた。


余程よほど苛立いらだっているのだろう。


普段ふだん余裕よゆうのあるリラックスした彼女とは、別人べつじんのように眉間みけんしわせている。


「だけど、よわっている小娘こむすめ電気仕掛でんきじかけのひつじなんて素手すで十分じゅうぶんよ!」


クロエのさけびと共に、彼女のりがニコの体をつらぬいた。


蹴られたニコは、アンのいるところからはる後方こうほうへと飛ばされる。


その豊かな白い毛をした体にあなが開けられたせいで、ニコの体からはバチバチと電子でんしながれが見える。


「ニコッ!?」


アンがけてもニコはもう返事をしなかった。


「クロエ、貴様きさまッ!!!」


アンはふるわせて立ち上がった。


そして、ふたたび彼女の全身が機械きかいおおわれていく。


機械の右腕みぎうでからは稲妻いなづまほとばしる。


「たとえ能力がふうじられても、まだ私のほうが力は上よ」


クロエは飛んできたアンの機械のこぶしけて、そのまま彼女の肩口かたぐちまわし蹴りをらわせた。


回し蹴りを受けたアンは、そのままニコのいるところまで飛ばされてしまう。


残念ざんねんだったわね。たとえ能力を封じても、今のあなたじゃ私には勝てない」


クロエは高笑こうしょうしたが、その表情の皺を見るに、まだいかりかおさまらないようだった。


蹴り飛ばされたアンは、たおれているニコをいた。


彼女の目から流れるなみだが、ニコの顔へとちる。


「ニコ……ニコ……目を覚ましてくれ……私をいて行かないでくれ……」


体を貫かれたニコを抱きながらアンは、何度も呼び掛けた。


だが、ニコがもう鳴き返すことはなかった。


「さあ、ちょっと予定外よていがいのことがあったけど。今度こそ私と1つになりなさい」


せまり来るクロエ。


それでもアンの目にはニコしかうつっていなかった。

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