226章

ニコをくアンへと近づいていくクロエ。


そして、その手をばした瞬間しゅんかん――。


突然彼女に向かって妖気ようきびた斬擊ざんげきはなたれた。


クロエは何とかそれをけ、斬擊ざんげきが飛んできた方向ほうこうを見ると――。


「アンに手は出させません」


2本のかたなを持った着物姿きものすがたの女性――クリア·ベルサウンドがそこにいた。


「どうやら私が一番乗いちばんのり……では、まいりますッ!!!」


クロエへとりかかるクリア。


不意ふいかれたクロエは、あわてて向かって来る2本の刀をさばいた。


これはどういうことだ?


この女はラスグリーンやロミーと戦っていたはずでは?


クロエはそう考えていると、いつのにか左右さゆうからみどりほのお電撃でんげきが飛んできていた。


さらに余裕よゆうがなかったクロエだったが、両腕りょううでまわして炎と電撃を相殺そうさい


「まさかこの炎と電撃は……?」


両目りょうめを大きく開き、しんじられないといった表情ひょうじょうのクロエが見たものは――。


緑色のジャケットを着た男――ラスグリーンと、黒装束くろしょうぞくを着た少女――ロミーであった。


「あなたたちッ!? これは一体どういうことッ!?」


クロエははげしく狼狽うろたえて声をり上げた。


その甲高かんだかい声を聞いたロミーは不快感ふかいかんあらわし、ラスグリーンは自分のみみ両手りょうてで押さえて笑う。


クリアは2人とはちがい、真剣しんけん眼差まなざしで、さけぶクロエの姿すがた見据みすえていた。


「私が説明せつめいしてやろう」


そして、クリア、ラスグリーン、ロミー3人の後方こうほうから、アンと同じストリング帝国のふかい青色の軍服姿ぐんぷくすがたの男――ノピア·ラシックがあらわれる。


クロエは、まさか4人全員が無事ぶじで現れたことに驚愕きょうがくしていた。


ノピアはゆっくりとクリア、ラスグリーン、ロミー3人のよこを歩き、持っていたピックアップブレードのひかりやいばをクロエへと向ける。


まるでマグマのような光剣こうけん


ノピアはそのまま説明を続ける。


連中れんちゅうから声が聞こえたのさ」


あやつられたラスグリーンと暴走ぼうそうしたロミー。


その2人と戦っていたノピアとクリア。


その戦闘中せんとうちゅうに、ノピアはみょう感覚かんかくおそわれた。


それはクリアの持つかたなである2匹の犬の姿をした精霊せいれい――。


小雪リトル·スノー小鉄リトル·スティールも同じだった。


ノピアが頭をかかえ、リトルたちがうめき始めていると、目の前にいたラスグリーンとロミーも同じようにその動きを止めていた。


そして、クリアの頭の中にも声が聞こえ始めた。


その声にぬしは、マナ、キャス、シックス、クロム、そしてルーザーだった。


クロエに取りまれた意思いしのある合成種キメラである4人と、ルーザーの声がラスグリーンとロミーを正気しょうきもどしたのだと、ノピアはつたえ聞かす。


「すべて聞かせてもらったぞ。お前はあの電気仕掛でんきじかけのひつじが出した光の影響えいきょうで、すべての能力のうりょくふうじられてのだとな」


いつの四方しほうからかこまれていたクロエ。


ラスグリーンの体からは緑と黒の炎が立ちのぼり、ロミーの機械化きかいかした体からは雷鳴らいめいひびわたる。


クリアの持つ2本の刀からはすさまじい妖気があふれる。


幕間まくあいは無しだ。このまま打ち出しの太鼓たいこたたいてやる」


そして、そう言ったノピアの両腕りょううで次第しだいに機械化していくのであった。

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