65章
いつの間にか、ストリング帝国の機械兵――オートマタたちは
ここまでに数体の
だが、ストーンコールドはまだ何者かと戦っている。
アンの耳に入って来る爆発音と合成種キメラの
……ストリング帝国はすでにいないようだが……。
なら、今ストーンコールドと戦っているのは誰だ?
まさか、皇帝が1人でやりあっているのか?
あの男なら、ナイフ1本でもあれば何百の兵士を全滅できそうだからな。
十分可能性はある。
「アン!!」
走っているアンの背中から声が聞こえた。
そこには大きなハンマーを背負った、銀白色ポニーテールの少年――クロムが追いかけてきていた。
彼は、大きめのチュニックに巻いている帯を締めながら、笑顔でアンの横に並んだ。
「クロム、なんで来たんだ!? お前も早く住人たちと一緒に避難しろ」
「炭鉱跡の場所は教えたし、ボクはキャスやマナと違って傷も治せないし。それに、今度はルドを連れて帰るんじゃなくて足止めでしょ? そんなことに女の子ひとりだけ行かせられないよぉ」
「しーしー言うな。それに年上に向かって女の子はないだろう。私のほうがお姉さんだぞ」
「え~だってアンは女の子だもん」
走りながら微笑むクロム。
アンは16歳。
彼女は年下の――12歳の少年に女の子と呼ばれ、少し複雑な気持ちになりながらも言葉を返す。
「クロムが強いのは知ってる。だけど、無理するなよ。私を
「へえ~ルドがそんなことをね」
ニヤニヤしているクロムのその笑みは、先ほどとは質の違うものに見える。
まるでアンのことをからかうかのような、そんな笑みだった。
「……おい、クロム。何が言いたい?」
「いや~ルドはきっとアンのことが好きになったんだよ。だから自ら盾となって――」
「ななな、なんだとッ!? バカな!! そんなことがあるか!!! 大体好きな相手に向かって、やれ「無愛想」だ「可愛くない」だとか言うものか!!!」
クロムの言葉を、アンは慌てながら
だが、クロムは首を
「え~でもボクはお似合いだと思うけどなぁ。ホントは好きなのに口の悪く喋っちゃうルドと、それを無愛想に返すアンって組み合わせ。うん、いいカップリングだよ」
「この話はもうここで終わり!! 今お前が言ったことを、キャスやマナには絶対言うなよ!!! もちろんニコにもだ!!!」
顔を赤くして叫ぶアンに、少々困った顔をするしかないクロムだった。
話している内に、ストーンコールドの姿が確認できる位置に着いた2人。
そこから見えたものは――。
黒装束を身に
「やっぱり……ロミーだ」
クロムがその光景を見て
ロミーがハンドグレネードを投げ、サブマシンガンVz61――スコーピオンを撃ちながら、時折近づき、大航海時代、中南米で使われていた農耕用の鉈を改良した刀剣類の一種――カトラスの刃でストーンコールドに斬りかかっている。
アンは、まるで知っていたかのような言いかたをした彼に話を訊いた。
クロムの話によると、ロミーはこの大陸に住む
彼も後をついて行って手伝おうとするのだが、彼女はルーだけを連れ、いつも黙って行ってしまうのだと言う。
そして、目の前にいるストーンコールドは、ロミーがずっと探し続けていた、彼女とクロムの育ての親であった女性――プラム・ヴェイスの
アンは、それを聞いて思う。
……復讐か。
きっと、それにクロムを巻き込みたくないんだろうな。
……気持ちはよくわかる。
私も最近まではそうだったから……。
「アン、どうしたの? お腹痛い? トイレ行く? ひとりで行ける?」
「違うッ!! バカにしているのか!? 私は子供じゃないぞ!!! ともかく今は、皆が避難するまであいつを止めるんだ」
アンの怒鳴り声を聞き、舌を出して笑ったクロムは、その後の彼女の言葉に
そして、アンはブレードを握って白い光の刃を出す。
クロムは、背負っていた大きなハンマーを両手に持った。
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