40章
「あの黒い羊は、何だったんだ……」
アンは遠くを見つめながら
キャスは、そんなアンを見て、声をかけずらそうにしている。
それは、マナやニコと違い、グレイに関していえば、この雪の大陸に来ているということしか情報がなかったからだった。
少しでもグレイに関する情報がほしい――。
そう考えているだろうアンに、キャスは気を使ってしまい、かける言葉が出てこなかった。
「……先を急ごう。キャスが感じるにシックスがここにいるのなら、そこにマナやニコもいるはずだ」
キャスのほうを振り向いたアンは、ぎこちな笑みを浮かべて言った。
それからキャスが感じるという方向へと進んでいたアンたちは、ガレージテントが並ぶ集落を発見する。
もう空には太陽が昇り、すっかり明るくなっていた頃だった。
「ここからだ、ここからシックスを感じる」
「いや、そんな真顔で言わなくても、このテントを見れば私にもわかるよ」
アンがそう言った
「うぐぐ、そんな言いかたをしなくったていいじゃないか。私は少しでも早くお前と仲間を会わせてやろうとだな」
「私は見たまま言っただけだよ。キャスだって、そんな怒らなくったっていいだろう」
「怒ってなどいない!!!」
「完全に怒っているじゃないか!!!」
2人が言い争いをしていると、そこに少女が現れた。
「ア、アン!? どうしてここへ!?」
赤毛のセミロングに赤い防寒具を着ている少女。
首にはゴーグル、手には革のフィンガーグローブ。
マナ・ダルオレンジが目に涙を浮かべて、プルプルと震えながら立っている。
「アン、会いたかったよ~」
マナは持っていた
「マ、マナか!? って、うわッ!? コラ、会って早々くっつくな!!!」
アンはウザったがっているが、内心ではマナと同じように喜んでいた。
反帝国組織バイオ・ナンバーのゴタゴタに巻き込まれ、離れ離れにされ、ようやく再会できたアンとマナの喜びは、今の2人を見れば誰でも理解できるものだった。
そんな2人をキャスが
「で、そっちの
マナはアンを
「はっ! まさかあたしというものがありながら……酷いよぉ~アン~」
「……お前は、私の何なんだよ」
アンが無愛想に返した。
そんな2人を見ながら、キャスがクスクスと上品に笑う。
「この
「ウッキー!! 何よあなた!!! 初対面の人に向かってずいぶんな言いかたじゃない!!!」
「ウッキーってお前……。自分で認めてるじゃないか……」
自分で認めるような発言をしたマナの態度に、キャスは呆れていた。
それからマナは、彼女の顔から足元までを舐め回すように見ると叫ぶように言う。
「ちょっとキレイでスタイルがいいからって……。何よ、この金髪青目おっぱい!!!」
「おい、マナ。それ……あまり悪口になっていないぞ」
アンが無愛想に言った。
どうやらキャスのルックスを見て発した言葉だったが、どれも悪口としては弱かった。
キャスは思う。
……ふふ、面白い娘だな。
しかし、
この娘からはシックスと同じ感じがする。
そんなやりとりの後――。
マナは、キャスに言われたことをもう忘れたのか、ご機嫌な様子で2人の手を引いて、自分が泊まらせてもらっているガレージテントへ引っ張っていった。
「いや~それにしても、てっきりシックスも来てるかと思ったんだけどな」
「シックスは組織のほうで忙しいからな」
「忙しい?」
アンの言葉に、マナが首を
「あとで詳しく話すよ」
そして、テントの中に入ると――。
そこには豊かな白い毛で
電気仕掛けの羊ニコが、アンの顔を見て泣きながら飛び掛かってきた。
「ニコ、元気だったか。テントでまた再会するのなんてこれも何かの
ニコはよほど嬉しいのか「メェ~」と鳴きながら、アンの顔をペロペロと舐めている。
そんな様子を見て、マナもキャスもつい微笑んでしまっていた。
「よ~し!! じゃあアンに会えたし、あたし、ご飯はりきっちゃう!!!」
マナが天井に手を挙げて叫んだ。
「そうか、そいつは助かる。このところカエルやヘビの
横にいたキャスが嬉しそうにそう言うと、マナは
「ムフフ」
「なんだ? 急に気持ち悪い顔して?」
キャスがマナのほうを向いて訊くと、突然彼女の着ている服を脱がせようとした。
「お、お前は!? 急に何をしようとしてる!?」
「ムフフ、とりあえずお風呂に入りなさ~い!!!」
「バ、バカやめろ!! 服を脱がすな!!!」
その後キャスは、マナに身ぐるみを
そんな2人の様子を見たアンは、ニコを抱きながら微笑んでいる。
「大事……風呂も食事も大事……。そしてマナもニコも大事……」
アンは、ニコの豊かな毛を優しく
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