30章
風を
「お、おい!? あれはなんだッ!?」
慌てながらアンに訊くキャス。
アンは無愛想に答える。
「ああ、シックスは風を
「炎……だと? あの国内で
「まあその男もだが、ここまで私と一緒に来たマナって娘も……」
それを聞いたキャスは、黙ると独り言を
あまりにも声が小さいので、何を言っているかはよく聞き取れない。
一人でブツブツ言っているキャスに、アンが大きくため息をついてから言う。
「キャス将軍」
呼ばれたキャスは、ふと我に返ってアンを見た。
「……キャスでいい。それでなんだ?」
アンは、これから外へ行って、シックスたち
「それであなたはどうする?」
訊かれたキャスは複雑そうな顔をした。
命を助けられた上に一時的とはいえ、共に戦った仲であるアンに対して
キャスが、何かを決意したような表情を見せて言う。
「この場は私に任せろ。ひとまず休戦するように呼び掛けてみる」
「キャス将軍……いえ、キャス。あなた……」
「勘違いするな。あくまで
早足で外へ向かうキャスの背中を追いかけて、アンもそれに続いた。
――外では、
電磁波放出装置――インストガンを撃ち続けるストリング帝国の機械兵オートマタ。
その後ろからは、帝国の戦闘車両――プレイテックが頭部に付いている大型のインストガンで、反撃してくる
先に戦場へ向かっていたブラッド、エヌエー、メディスンの3人がそれぞれ突撃銃――ステアーACRをオートマタへと当てるが、そのメタリックな白い装甲を
だが、それでも撃って、撃って、撃ちまくる。
オートマタたちの突撃はかなり雑なものだったが、いくら銃弾を当てても倒れないのは脅威だった。
ジリジリと後退していく
「ふざけやがって、ありゃ反則だろッ!?」
ブラッドが、
横にいたメディスンの表情が
「俺のせいだ……俺が……あんな奴の口車に乗らなきゃ……」
その傍にいたエヌエーが叫ぶ。
「ふたりとも!! こんなときに弱音なんて吐いちゃダメよッ!!! リーダーは、こんな絶望的な状況でもいつもあたしたちを守ってくれたんだよ!!!」
エヌエーの言う通りだった。
「その通りだ」
3人のところへシックスが現れた。
その姿を見て、ブラッドとエヌエーは笑顔になったが、メディスンだけは
「遅いぞシックス!! なにやってたんだよ!!!」
ブラッドが嬉しそうに怒鳴った。
シックスは黙ったまま頭を下げると、電磁波と銃弾が飛び交う前線へと飛び込んでいった。
「シックス!? 無茶よ!!」
そんなシックスを見たエヌエーが、心配そうに声を荒げた。
シックスは、オートマタに向かって、鋼鉄の手甲脚甲を付けた腕と脚を振り回していく。
だが、簡単に倒れない。
身長210cm体重99kgはある屈強な体を持ったシックスの攻撃でも、機械兵オートマタは倒れない。
「下がれよシックス!! いくらお前でもその数を相手にするのは無理だ!!!」
ブラッドがエヌエーに続いて叫んだ。
だがシックスは――。
「俺はあきらない……」
そう
その風は、シックスの両手両足に巻き付いていく。
「それが親父の……
シックスの嵐のような
それから、風を
拳が当たった瞬間に、風が竜巻のように巻き起こる。
先ほどはダメージすら与えられなかったが、今度の攻撃はオートマタの頭部を破壊した。
「……やっぱりあいつは特別だな」
メディスンがポツリと言った。
そして言葉を続ける。
「いまわかったよ、あいつは風が
「なに言ってんだよ、メディスン」
ブラッドがメディスンの言葉を
「シックスの意志は親父の意志だ。俺はてめえのことが大嫌いだがよ、あいつはお前のことを信頼している。あんな目にあわされたってのにな。……メディスン、てめえがてめえなりにリーダーの意志を
「ブラッド……」
名を呼び、その後の言葉が出ないメディスン。
そんなメディスンにエヌエーが言う。
「いまこそ私たちの意志をひとつに」
顔を合わせた3人は、そのままシックスの後に続いていった。
そこから
「全員、それまでだ!!!」
さらに激しくなる戦場に、抜けのいい美声が響き渡った。
その声に、ストリング帝国の機械兵も
声の先には
キャスは
「これ以上の戦闘は、互いに被害を増やすだけだ。ストリング帝国の将軍として、両陣営に対し一時休戦を申し出る!!!」
キャスの後ろにいたアンは思う。
……機械兵は将軍であるキャスの命令なら聞いてくれるはず。
この後にキャスがどうするかわからないけど、いまはこれでいい……。
その後、オートマタの軍勢の背後から、一台のプレイテックがゆっくりと二人の前に現れた。
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