23章

シックスがかがんで倒れている男の一人に声をかけていた。


「おい、どうした!? 一体なにがあったんだ!?」


冷静なシックスが取り乱している姿を見て、アンはニコを抱えてマナと慌てて傍へ駆け寄った。


何度も声をかけるシックス。


だが、すでに大勢の男たちは皆息を引き取っていたようだ。


うつむいていたシックスは、何かを発見したのか駆け出していく。


あとを追うアンたち。


そこにはごついベストの上にカーキ色のミリタリーコート姿――。


白髪のじった短髪と口髭、つぶれている片目の男が倒れていた。


「お、親父……」


その言葉で、倒れている人物を誰か理解したアンとマナは、シックスに声をかけることができず、ただ立ち尽くしている。


……この白髪の混じりの男が、反帝国組織バイオ・ナンバーのリーダー、バイオか。


アンがそう思っている傍で、涙を流しながら震えているシックスがいた。


力強くたくましかった彼の背中が、今はずいぶん小さく見える。


「誰があんたをったんだ……。キメラか? それともストリング帝国か?」


シックスは返事をしないバイオに向かって、声をかけ続けていた。


その後、シックスはそこにいた男たちを簡素かんそながら埋葬まいそうする。


もちろん、アンとマナも手伝った。


全員を埋め終わるとシックスは、バイオや他の男たちが持っていた銃――ステアーACRを墓標代わりに突き刺していく。


「取り乱してすまなかった。さあ、行こう」


背中を向けながら言うシックス。


そして再び歩き出す。


アンたちは、何も言えずにその後をついて行った。


それから、しばらく進むとシックスはある廃墟はいきょへと入って行く。


中に入ると、床にある大きなふたを開けた。


「ここが反帝国組織バイオ・ナンバー本拠地ほんきょちだ」


そういったシックスの顔は、いつも通りだった。


それを見たマナは、少しだけさびしい気持ちになる。


……本当は、今でも泣いていたいんだろうけど。


シックス……強いな。


そんなマナに、ニコがすり寄ると、マナはニコを持ち上げてギュッと抱きしめた。


「地下にあるんだな。たしかに地上にはキメラが出るし、帝国の攻撃もある。隠れるにはいい場所だ」


アンの言葉に、シックスがうなづいてから言葉を返す。


「到着したばかりで悪いんだが。俺は外で見たことを報告しなければならない。すぐにでも休みたいだろうが、もう少し付き合ってくれ」


反対などするはずがなく、アンたちはシックスについて行った。


地下の中は、入ってすぐに大きな空洞があった。


そこには、武装した反帝国組織の兵士たちが集まっている。


大きな空洞から見えるのは、土をけずり、柱で支えている無数の部屋。


それらには、ちゃんと扉も付いていた。


各自それぞれが住んでいるのだろう。


さらに奥へ行くと、屋台のような売店が立ち並んでいた。


聞いていた通り、老若男女ろうにゃくなんにょが歩いていて、何人かは自分の店と思われるところの前にいる。


だが、そこにいる人々の表情は暗く、覇気はきがまるでない。


屋台のフロアを抜けると、そこにはひと際大きなテントがあった。


シックスはそのテント中へと入っていったので、アンたちもついて行くと――。


突然、大勢の男たちに押さえつけられた。


「いきなりなんだ!?」


「ちょっとやめてよ!?」


地面に顔をつけられ、身動きが出来なくなるアンとマナ。


その目の前で、シックスも同じように床をめさせられていた。


「おいメディスン!! これはどういうことだ!?」


叫ぶシックスの先には、反帝国組織のリーダーが座っていたであろう席に男がいる。


……こいつら、シックスの仲間じゃないのか?


もしかして、外でリーダーのバイオが殺されていたこととなにか関係が……。


アンが考えていると、その頭を、反帝国組織バイオ・ナンバーの兵士がさらに地面へと押しつけた。


「この女たちはなんだシックス。外でナンパでもしてきたのか?」


いつくばるシックスの姿を見て、席に座っていた男が怪訝けげんな顔をして言った。

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